「ラ・ボエーム」in メトロポリタン・オペラ


ニューヨーク市では、ブロードウェイミュージカル等のエンターテインメントが9月以降に続々と再開しています。

私も、コロナ禍になって以降初めてメトロポリタン・オペラ(メット)へ行きました。観たのはプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」。定番の人気作なので、オペラについて詳しくない人でも名前くらいは聞いたことあるのではないでしょうか。


オペラなど観たことのなかった若い頃の私にとって、「ラ・ボエーム」と言えば、大好きだった中森明菜の大ヒットシングル「DESIRE」のB面曲のタイトル!(当初はA面になる予定だったとか。)また、「ボエーム」とはボヘミアン(自由奔放な生き方をする人達のこと)のフランス語らしく、葛城ユキが歌っていた「ボヘミアン」という曲も思い出します。が、オペラ「ラ・ボエーム」はそういった80年代のヒット曲とは全く違った趣で(当たり前)、美しくも悲しいラブストーリーがロマンチックな音楽に乗せて綴られます。

数年前に最初に観た「ラ・ボエーム」が素晴らしく印象に残っているので、メットが再開したら絶対また観たいと思っていました。


なお、メットへ入場する際はまずワクチン接種証明のアプリ画面(もしくは接種証明カード)とIDを係員に提示し、入場してからチケットを別の係員に見せる(バーコードを読み取る)という段取りでした。ニューヨークでは観劇をする際にワクチン接種証明が必須になっています。また、劇場内では常時マスクを着用する必要があります。

メトロポリタン・オペラ劇場内


1. 基本情報

作品名:La Bohème(ラ・ボエーム)
作曲:Giacomo Puccini(ジャコモ・プッチーニ)
演出:Franco Zeffirelli (フランコ・ゼッフィレッリ)

観劇日時:2021年11月9日 午後7:00 〜 10:00(4幕、30分休憩2回含む)

劇場:Metropolitan Opera (30 Lincoln Center Plaza)


2.あらすじ

Wikipediaなどであらすじを確認できますが、ここでも簡単に紹介します。

第1幕

舞台はパリのとある屋根裏部屋。詩人のロドルフォと画家のマルチェッロ、そして仲間二人(哲学者と音楽家)が一緒に暮らしている。

ロドルフォが一人部屋に残ったとき、貧しくて病気の女性ミミが火を借りに来る。ロドルフォとミミは互いに自己紹介し合う。

このシーンでのロドルフォが歌う「冷たい手を」、ミミが歌う「私の名はミミ」、それに続く二重唱は第1幕の聞きどころです。


第2幕

舞台は移ってパリの賑やかな通り。ロドルフォとミミはマルチェッロら仲間とカフェで合流して食事する。

そこにマルチェッロの元恋人ムゼッタが金持ちの男を連れてやって来る。ムゼッタはマルチェッロの気を惹こうとし、マルチェッロの気持ちも盛り上がり、二人はよりを戻す。最後には勘定を金持ちに押し付け、皆去って行く。(ひどい!)

ここでムゼッタが妖艶に歌う「私が街を歩けば」も有名。


第3幕

舞台は冬のとある居酒屋。そこで働くマルチェッロを訪れたミミは、ロドルフォと最近うまくいっていないことを相談する。

先に居酒屋にいたロドルフォが外に出て来て、ミミは隠れる。ロドルフォはマルチェッロに「ミミの病気は重く、貧しい自分は助けてあげられない」と苦悩を打ち明ける。

彼の想いを知ったミミが出て来て、ロドルフォに別れを告げる。(マルチェッロもムゼッタと喧嘩して別れる。)

別れの際にミミが歌う「あなたの愛の呼ぶ声に」は美しいアリアです。


第4幕

舞台は1幕と同じ屋根裏部屋。ロドルフォとマルチェッロは別れた恋人のことを想う。仲間二人も戻ってくる。

そこにムゼッタが重体のミミを連れてやって来る。ミミは最期にロドルフォに一目会いたかったという。ロドルフォはミミをベッドに寝かせ、他の人達は薬を買うために外に出て行く。

二人きりになったロドルフォとミミは思い出を語り合う。皆が戻って来るが、やがてミミは息絶える。


3.見どころ、感想

このような悲恋の物語ですが、音楽がとにかく甘美です。

前回「ラ・ボエーム」を観たとき、ロドルフォ役のテノール歌手が素晴らしく、第1幕の「冷たい手を」で「私は貧しいけど、心は愛に満ちて豊かです!」みたいな歌詞を朗々と歌い上げるのを聞きながら、あぁ確かに心が豊かであれば人生は素晴らしいよな〜、などと胸熱になったのでした。今回もロドルフォの歌にすごく期待していましたが、期待しすぎたせいかまぁまぁ?な感じでした。(偉そうですが...)

今回は、ロドルフォの「冷たい手を」に続けてミミが歌う「私の名はミミ」により感動しました。ミミ役はAnita Hartigというソプラノ歌手でした。既に有名な歌手なんでしょうが、今後要チェック!

舞台が進むに連れて、歌手達の声も温まってきたのか、歌が一層情感豊かに響いているように聞こえました。改めて、マイクなしの生声で聴かせるというのはすごいことだと思います。(今、ミュージカルではあからさまにマイクを付けて歌っているので特に。)


また、メットでだけ見られるものなのか分かりませんが、フランコ・ゼフィレッリの演出による豪華な舞台セットも見どころです。特に、屋根裏部屋の第1幕が終わって10分程度の休憩を挟み、第2幕が開くと人混みで賑わうパリの街が出現するのは圧巻で、劇場は感嘆の声と拍手に包まれました。街を行き交うエキストラもすごい人数で、本物の馬に引かれた馬車も出てくるし、こんな贅沢な演出をして果たして採算がとれるのだろうか...と心配にすらなりました。

ちなみに、メットで長年エキストラの仕事をしている知り合いがいます。流石にエキストラだけで生計を立てることは出来なさそうですが、生涯にわたって続けたいライフワークだと言っていました。


「ラ・ボエーム」には、私の認識では誰もが「知ってる!」「聞いたことある!」と言えるような超有名曲はありません。(例えば、プッチーニの他の作品で言えば「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」や、「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」のような。)でも、話の筋もそれ程複雑ではなく、オペラ初心者にもおすすめできる作品だと思います。


私が行った日は今シーズンの「ラ・ボエーム」の初日だったようで、立派なスーツの男性やゴージャスなドレスに身を包んだ女性がたくさん来ていました。ちなみに、私は超普段着で行きました...。

オペラに行く際のドレスコードを気にする人は多いですが、座席のランク(値段)にかなり幅があり、観客層も様々なので、普段の格好で行っても特に問題ないと思います。ただ、せっかくの非日常の機会なので、気分を盛り上げたいのであれば、是非おめかしして行くと良いでしょう。


今シーズン、あと何回か観に行きたいな♪