バレエ「ジゼル」鑑賞


1ヶ月ほど前のことになりますが、10月にAmerican Ballet Theater (ABT)によるバレエ「ジゼル」を観に行きました。

ちなみに、私はコロナ禍の前に年1、2回くらいバレエを観に行っていた程度で、バレエに関する詳しい知識は全くありません。あくまで素人視点の鑑賞記となります。


公演が行われたDavid H. Koch Theaterは、メトロポリタン・オペラハウスと同じリンカーン・センターの敷地内にあります。規模はメットより少し小さいですが、とても美しい劇場です。


現在ニューヨーク市では、屋内で観劇をする際、コロナワクチンの接種証明を提示すること、劇場内でマスクを着用することが必須になっています。今回入場する際には、まずスマホにダウンロードしたワクチン接種証明のアプリ画面(もしくは接種証明カード)とID(免許証など)を係員に提示し、入場してから別の係員にチケットを提示する(スマホにダウンロードしたチケットのバーコードを読み取ってもらう)という流れでした。


1. 基本情報

作品名:Giselle(ジゼル)
作曲:Adolphe Adam(アドルフ・アダン)
振付:Jean Coralli & Jules Perrot(ジャン・コラーリとジュール・ペロー)

観劇日時:2021年10月22日 午後7:30 〜 9:30位(2幕、休憩1回含む)

バレエ団:American Ballet Theater

劇場:David H. Koch Theater (20 Lincoln Center Plaza)

「ジゼル」は、「ラ・シルフィード」「白鳥の湖」とともに三大バレエ・ブラン(白のバレエ)のひとつと言われるロマンティックバレエの代表作、とのことです。

「ロマンティック」ということで、いやが上にも期待が高まります(笑)。


2. あらすじ

以下、超簡単なあらすじです。

第1幕

とある農村の娘ジゼルと青年アルブレヒトは互いに想いを寄せる。しかし、アルブレヒトは貴族の身分であり婚約者もありながら、それを隠している。ジゼルに恋する男ヒラリオンは嫉妬にかられ、ある日アルブレヒトの真実を暴く。ジゼルはショックのあまり錯乱して死んでしまう。

ジゼルが狂乱するシーンでは、踊りの技術だけでなく演技力も要求されるとのこと。

第2幕

死んだジゼルは、精霊達の集まる夜の森に迎え入れられる。ジゼルの墓を訪ねたヒラリオンは森に迷い込み、聖霊は彼を死ぬまで踊らせる(!)。悲しみにくれるアルブレヒトも森にやって来るが、やはり精霊は彼を力尽きるまで踊らせようとする。ジゼルは彼の命乞いをし、やがて夜が明けてアルブレヒトの命は助かるが、ジゼルは別れを告げて去っていく。

ジゼルとアルブレヒトが二人で踊る「パ・ド・ドゥ」が最大の見せ場とのこと。


3. 感想

コロナ禍以降で久々の公演だったこともあってか(その日が初日ではありませんでしたが)、開始前のオーケストラの挨拶のときも、第1幕が始まってダンサーが舞台に出て来たときも、観客の歓声・拍手が熱かったです!ようやくバレエを楽しむことができる喜びに溢れているようでした。

ダンサーやオーケストラの演奏者達が、このコロナ禍をどのような思いで過ごしてきたかと思うと胸が痛くなりますが、彼らも喜びをいっぱいに表現しているように感じました。


ダンサー達の踊りはもちろんのこと、舞台のセットや出演者の衣装もカラフルで美しかったです。中世ドイツの農村が舞台とのことですが(オーストリア地方の伝説を元に作られたとのこと)、コスチュームは中世イタリアを舞台にした「ロミオとジュリエット」で見た衣装を思い出させました。

第1幕での明るい昼間の農村から、第2幕で精霊達がいる夜の森に舞台が移り、その明暗のコントラストも印象的でした。


踊りに関しては、第2幕に見どころが多かったように思え、特にジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥや精霊達の群舞は、美しい音楽とも合間って幻想的でした。アルブレヒトが力尽きるまで踊らされるところは、超絶ダンスが続くのかと期待していて…、もう少し見たかった気もしました。


4. 雑記:バレエ鑑賞について

実際にバレエを習っていたとか、子供に習わせているとか、もしくはよっぽど好きでない限り、バレエ公演を定期的に観る人はそれ程多くないように思います。私のNYの知り合いでも、バレエ好きという人は多くありません。オペラと同じで、少し敷居が高いと感じてしまうようです。

私も昔はそんな印象を持っていましたが、実際に観てみると、伝統に裏打ちされた踊りの型、訓練されたバレエダンサーの技術と情熱、美しい音楽、きらびやかな衣装・舞台、等々に魅了されて、また別のも観てみたい!と思うようになりました。

あと、基本的にバレエには台詞がなく、出演者の身振り手振りや踊りで話が進行するので、ミュージカルやオペラなどの鑑賞時にストーリーを追う上で日本人が感じる「言葉の壁」はありません。その分、話を事前に予習しておくのが望ましいです。以前、バレエをやっていた友人と一緒に観たときは、事前にストーリーや見どころについてみっちりレクチャーしてくれたので、鑑賞時に余裕を持って「次に見どころが来る!」などと心の準備をしながら楽しむことができました。

ただし、事前知識なくダンサー達の卓越した踊りを見るだけでもすごいと感じるでしょうし、結局楽しみ方は人それぞれだと思います。


5. American Ballet TheaterとNew York City Ballet

ニューヨークには、今回私が観たABTの他に、New York City Ballet(NYCB)という有名なバレエ団があります。(もちろん他にも様々なバレエ団があります。)

私はNYCBの公演を観たことがないし、比較する見識もないのですが、調べたところではどちらも伝統・歴史があり、アメリカ最高峰のバレエ団と並び称されていました。主な違いとして、ABTが基本的にクラシックな作品を上演するのに対し、NYCBの方はよりコンテンポラリーで中小作品を含め幅広いレパートリーを持つとのことでした。その他、ABTにはよりパワフルでアスレチックな男性ダンサーがいて、ダイナミックな舞台が見られるとのこと。

どちらのバレエ団も素晴らしいのでしょうが、方向性が違うみたいですし、各々の好みのスタイルや上演作品に合わせて観に行けばいいんだろうと思います。

NYCBの公演もいつか観てみたいです。