バレエ「白鳥の湖」鑑賞


ニューヨークのメトロポリタン・オペラハウス(メット)では、毎年オペラシーズンが終わった後の6月〜7月にかけて、American Ballet Theater (ABT)によるバレエ公演が行われています。

先日、ABTによる「白鳥の湖(Swan Lake) 」を観に行きました。「白鳥の湖」はあらゆるクラシックバレエの中で最も有名で人気のある演目と言って良いと思います。チャイコフスキーによって作曲された音楽、中でも特に有名な「情景」のメロディは、バレエについて全く知識のない人であってもどこかで聞いたことがあるでしょう。


1. 基本情報

作品名:Swan Lake(白鳥の湖)
作曲: Peter Ilyich Tchaikovsky(ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)
振付:Kevin McKenzie after Marius Petipa and Lev Ivanov

観劇日時:2023年7月15日 午後2:00 〜 4:30(4幕、休憩1回)

バレエ団:American Ballet Theater 

劇場:Metropolitan Opera (30 Lincoln Center Plaza)

公演開始前の劇場


2. あらすじ

演出によって話の展開が異なるようですが、私が観た公演のあらすじは大まかに(多分)以下のとおりです。

第1幕

とある王宮では王子ジークフリートの成人を祝う宴が開かれている。王子の母親は、明日行われる舞踏会で妃を選ぶように王子に言い渡す。まだ結婚したくない王子は憂鬱になり、友人と一緒に湖へ白鳥狩りに向かう。

2幕

王子がたどり着いた湖では白鳥の群れが泳いでいる。1羽の白鳥が美しい娘に変身し、王子はその美しさに心を奪われる。その娘オデットは、悪魔ロットバルトから呪いをかけられており、夜だけ人間の姿に戻ることができるという。呪いを解く唯一の方法は、まだ誰も愛したことのない男性に愛を誓ってもらうこと。王子はオデットへの愛を誓い舞踏会に誘うが、夜明けとともにオデットは白鳥の姿に戻って去っていく。

第3幕

王宮の舞踏会で、王子はオデットのことを思い続けている。そこへ変装した悪魔ロットバルトと娘のオディールが現れる。オディールは魔法を使ってオデットに化けている。王子はオディールをオデットと思い込み、結婚を誓ってしまう。途端にロットバルト達は正体を現し、悪魔の仕業に気付いた王子はオデットのいる湖へ向かう。

第4幕

愛の誓いが破られて嘆くオデットに、王子は許しを請う。そこへ悪魔ロットバルトが現れ、王子は激しく戦った末に悪魔を討ち破る。が、オデットへの呪いは解けず、絶望した王子とオデットは湖に身を投げ、来世で永遠に結ばれる。


公演後のカーテンコール


3. 感想

上記のあらすじのとおり、王子もオデット(白鳥)も死んでしまう悲しい結末でしたが、オデットへの呪いが解けてハッピーエンドになる演出もあるとのこと。どちらが良いか、人によって好みが別れるところでしょう。

私は、2人一緒に来世へ旅立てたことが物語としては良かったと思うし、最後にオデットと王子が舞台後方の崖から飛び降りる際の、飛び降り姿勢の美しさに感動しました(笑)。


チェイコフスキーの音楽が素晴らしいことは言うまでもありません。有名な曲「情景」は第2幕の冒頭に出てきて、その後も随所で使用されていました。その他にも、第1幕の「ワルツ」、第2幕の「小さな白鳥たちの踊り」、第3幕の「ハンガリーの踊り」とそれに続く各国の踊りなど、よく知られている印象的な曲が続きます。

チャイコフスキーはバレエ「くるみ割り人形」(以前のブログで紹介しています)の音楽も作曲していますが、こちらも「白鳥の湖」と同様に有名な曲のオンパレードであり、彼の音楽の時代を超えた普遍性を表していると思います。


バレエ的な見所は、何と言っても第3幕です。「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」では、オデットに化けたオディールと王子ジークフリートが交互に高難度なダンスを繰り広げ、会場は盛り上がります。クライマックスでのオディールの32回転フェッテ(軸足のトウで立ち、回転しながら片方の足を曲げ伸ばす)が有名な見せ場ですが、王子の高度な踊りも凄まじいです。


今シーズン、私はABTの「Like Water for Chocolate(ABTの新作らしい)」「ジゼル」そして「白鳥の湖」3作品を観る機会がありましたが、それぞれにバレエダンサー達の美しいダンスはもちろん、衣装のカラフルさや舞台演出の美しさ・豪華さも楽しみました。

今年に入ってからバレエへの興味が強まり、New York City Ballet(NYCB)など複数のバレエ・カンパニーの公演を観ているのですが、やはりクラシックバレエの公演におけるABTの華やかさは、他では中々見られない特徴であるように思います。(と偉そうに言えるほど詳しいわけではありませんが...)

ところで、 メットの公演ではラッシュチケットという当日券が安価で購入可能(1人2枚まで)です。もちろん公演当日の残席次第になりますが、オペラの場合25ドル、バレエの場合は35ドル(2023年現在)でオーケストラ等の良い席が購入できる場合があります。スケジュールに余裕がある方は試してみると良いでしょう。

ラッシュチケットは、夜公演の場合正午からメットのウェブサイトで販売が開始されますが、正午頃はサイトへのアクセスが難しく、時々すぐ「Sold Out」という表示が出ます。しかし、私の経験では少し時間を置いてアクセスすると購入可能な場合があり、中々トリッキーなシステムです。

また、ABTの公演の場合、上階の安い席であれば通常でも35ドル程度のものがあるので、あまり席にこだわりがなければ、わざわざラッシュチケットに賭けることもなく、先にチケットを購入しておく方が安心かもしれません。