ミュージカル「Parade」鑑賞



久々のオンブロードウェイ・ミュージカルの鑑賞記になります。


「Parade」というミュージカルを観に行きました。20世紀初頭にジョージア州アトランタで実際に起きた「レオ・フランク事件」という冤罪事件をベースにしており、ユダヤ人への人種差別が描かれています。

1998年にブロードウェイで初演されているらしく、2023年の本公演はリバイバルになります。今年の第76回トニー賞でミュージカル部門の最優秀リバイバル作品賞をしました。

主演を演じているBen Plattベン・プラット)という俳優は、ミュージカル「Dear Evan Hansen」で主役を演じて一躍有名になりました。「Dear Evan Hansen」については私の以前のブログで感想を紹介していますが、私が観たときEvan役は既に別の俳優に変わっていました。ですので、私にとっては初めてベンのパフォーマンスを観る機会になりました。


1. 基本情報

作品名:Parade (パレード)
脚本:
Alfred Uhry
作詞作曲:Jason Robert Brown

観劇日時:2023年7月7日 午後8:00 〜 10:30

劇場:Bernard B. Jacobs Theatre (242 W 45th Street, New York, NY)

https://paradebroadway.com

今回の劇場は中規模で、2階(メザニン)席はかなり傾斜があるため後方でも舞台がよく見えました。ただし席の幅が小さめで、大柄の人にはきついと感じるかもしれません...


2.あらすじ

前半

舞台は1913年のジョージア州アトランタ。

南北戦争の戦没者追悼記念日のパレードが行われている。鉛筆工場の工場長でユダヤ人のレオ・フランクは、街の騒ぎに辟易として妻のルシールに文句を言い、仕事に向かう。その日、レオはオフィスを訪れた従業員の女の子メアリーに給料を支払う。

翌日、レオの家に警察が現れ、昨晩メアリーが殺害されたことを知らせると共に、殺人容疑でレオを連行する。遺体の第一発見者である黒人のニュート・リーも容疑者だったが、事件の早期解決を図る検事はユダヤ人のレオを殺人罪で起訴する。

新聞記者のクレイグはこの事件に関する虚実入り混じった記事を書いて市民感情を煽り、反ユダヤ主義者のトム・ワトソンも群衆を扇動する。裁判が始まると証人達はレオに不利な証言をし、工場の清掃員ジム・コンリーは、レオのオフィスで殺されたメアリーの死体遺棄に加担したことを証言する。レオに死刑判決が下される。

後半

事件から1年後。妻ルシールはアトランタ州知事スレイトン邸でのパーティを訪れ、スレイトンにレオの無罪と裁判のやり直しを訴える。心を動かされたスレイトン知事は事件の再調査に協力する。

裁判の証人達の証言を洗い直した結果、レオの無実を示す証拠が次々と集まる。スレイトン知事は、レオを死刑から終身刑に減刑することを決定するが、民衆は大きく反発する。

レオとルシールはこの事件を通じて絆を深めていく。レオが服役中の刑務所内で、二人はピクニックをして愛を再確認し、近いうちに釈放されることを信じて別れる。

しかし、その夜レオは何者かによって刑務所から拉致される。木に括り付けられたレオは殺害の自白を迫られるが、それを拒否。ついにレオは人々によって「処刑」される。

また戦没者追悼記念日がやって来る。ルシールは一人でパレードを見つめる。


3.感想など

とても重いテーマのお話ですが、その中でも所々に散りばめられているユーモアに救われます。

音楽とキャストは本当に素晴らしかったです。レオ役を演じるベン・プラットが舞台に出てくると大きな歓声が上がりましたが、やはり彼の歌声は素晴らしく、聞き手の心に訴えてくるような説得力がありました。その他にも、妻ルシール役のMicaela Diamondやジム・コンリー役のAlex Joseph Graysonの力強い歌声に圧倒されました。

Intermission(休憩)の間ずっとレオ役のベン・プラットが舞台上にいるという独特の演出でした。


一番最後は、舞台中央で「2019年に本事件の再調査が始まり、今も続いている」という字幕が出た後に暗転するという終わり方でした。鑑賞後ズーンと暗くやるせない気持ちになりましたが、こんな悲劇的な事件があったことを知ることができたのは本当に良かったと思いました。

今も世界には様々な嘘偽りがあふれていて、何を信じていいかも分からなくなる時がありますが、一方的な情報や扇動に惑わされることなく、自分で判断して行動することができるか...考えさせられました。



「せっかくニューヨークへ来たので、何かミュージカルが観たい。」とか「楽しいミュージカルが観たい!」というような方には正直あまりお勧めできませんが、こういった社会派のミュージカルにも興味があるようであれば、是非鑑賞をお勧めします。ベン・プラットを生で見たいという方にももちろんお勧めです!

ニューヨーク・ブロードウェイでの公演は2023年8月6日で終了のこと。ご興味がある方はお早めに!