トニー賞授賞式へ!


2022年6月12日(日)、第75回トニー賞の授賞式が開催されました。

トニー賞とは、ニューヨークのブロードウェイで上演されている演劇・ミュージカルに対して贈られる賞です。アメリカ演劇界で最も権威ある賞とみなされているとのこと。

今年、私はその授賞式に出席することができました。それも、観客として観るだけでなく、コーラスの一員としてステージで歌うことができました!その貴重な体験についてご紹介します。


トニー賞について

トニー賞は、毎年のエントリー期間中にニューヨークのオン・ブロードウェイで開幕した演劇・ミュージカル作品が受賞対象となります。

毎年5月にノミネート作品が発表され、6月にニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールで授賞式が開催されています。コロナ禍のために2020年の受賞式は中止され、2021年9月になって2020年の作品に対する授賞式が行われました。今年からは通常時期の開催に戻りました。


これまで、私はトニー賞の授賞式をテレビの生放送で見てきましたが、式に出席できるのはミュージカル・演劇作品の関係者のみなのだろうと思っていました。

ところが、今回出席して知ったのですが、授賞式のチケットが一般向けにも販売されていて、オーケストラやメザニンの後方席から観覧できるようです(値段までは調べませんでした)。チケットさえ買えば式を観に行けることを知らない人は結構多いと思います。


チケットにはドレスコードとして「Black Tie Only」と書いてあり、フォーマルな装いで出席する必要があります。男性の場合、一般的なのは黒のタキシード・白のウィングカラーシャツ・黒のボウタイ・黒の革靴...らしいですが、文字どおり「Black Tie」である必要はなく、フォーマルな装いの解釈は出席者それぞれのようでした。当日は、様々な衣装の出席者が会場に溢れていました。



第75回トニー賞授賞式

第75回トニー賞授賞式は2022年の6月12日(日)の東部時間夜8時〜11時に行われ、CBSというテレビ局で全米に生中継されました(日本ではWOWOWで生中継)。

授賞式が始まる直前にも、夜7時からACT ONEと呼ばれるプレショーが行われ、いくつかのパフォーマンスや受賞発表がありました。ACT ONEはCBSでは放送されず、Paramount+というストリーミングサービスでのみ生中継されました。私達コーラスの出番もこのACT ONEの中でした。


各賞のノミネート・受賞結果の詳細については、トニー賞のページ等で確認できますが、主な部門の最優秀賞は以下のとおりです。

ミュージカル部門演劇部門
作品賞 A Strange LoopThe Lehman Trilogy
リバイバル作品賞CompanyTake Me Out
主演男優賞Myles Frost (MJ)Simon Russell Beale (The Lehman Trilogy)
主演女優賞Joaquina Kalukango (Paradise Square)Deirdre O’Connell (Dana H.)
主演男優賞Matt Doyle (Company)Jesse Tyler Ferguson (Take Me Out)
主演女優賞Patti LuPone (Company)Phylicia Rashad (Skeleton Crew)


私は演劇の方は全く観ないので、特に触れません。じゃあミュージカルの方は詳しいのかと聞かれると...、受賞した上記のミュージカルのどれもまだ観たことがありません(汗)。

事前に聞いていた話では、「A Strange Loop」は評判が高かったので、納得の作品賞受賞という感じでした。主人公の太った黒人ゲイが孤独の中で自分と向き合う内容のようで、アメリカ社会のマイノリティの人間に焦点を当てている点が今らしいとも言えます。本作のプロデューサーの1人であるジェニファー・ハドソンは、この作品賞受賞により「エミー賞」「グラミー賞」「アカデミー賞」「トニー賞」を全て制覇したことも話題になりました。

その「A Strange Loop」の主演が主演男優賞も有力と思われていたようですが、受賞したのはマイケル・ジャクソンの音楽による新しいミュージカル「MJ」でマイケル役を務めたマイルズ・フロストでした。 なんとまだ22歳とのこと!彼は授賞式でも本物そっくりのパフォーマンスを披露し、それを紹介したのはマイケルの子供達、パリス・ジャクソンとプリンス・ジャクソンでした。(以下はパフォーマンスのYouTube動画リンク↓)

The 75th Annual Tony Awards | MJ Performance | CBS

主演女優賞をとったのは「Paradise Square」という作品に主演したジョアキーナ・カラカンゴという女優さんでしたが、式での彼女の歌唱パフォーマンスが圧巻で、歌が終わると会場はスタンディング・オベーションで盛り上がりました。

The 75th Annual Tony Awards | Paradise Square Performance | CBS

こういった受賞作品のパフォーマンスを生で見れたのは感激でした。いつか是非観てみたいと思う作品がたくさんありました。


また、受賞式の司会を務めたのは、昨年公開の映画「ウェストサイド物語」でアニータ役を務め、アカデミー賞主演女優賞を受賞したアリアナ・デボーズでした。彼女は式のオープニングアクトも務め、様々なミュージカル作品を盛り込んだナンバーを歌い踊って、素晴らしいパフォーマンスを披露しました。

The 75th Annual Tony Awards | Ariana DeBose Opening Number | CBS


ところで、実際に会場に行って知ったのですが、放送のコマーシャル中にトイレに行った場合、コマーシャル明けまでに席に戻れないと、次のコマーシャルタイムまで会場内に入れないのです!(会場のドアが閉められます。)確かに、大事な受賞の瞬間に観客がダラダラ会場を出入りしていたら、興醒めかもしれません。私はそれを聞いて、授賞式の3時間一度もトイレに行きませんでした。最後の方はソワソワでした。



トニー賞の舞台で歌う!

私は以前のブログでも紹介したとおり、New York City Gay Mens Chorus(以下NYCGMC)というコーラスに所属して歌っています。

コーラス活動 in ニューヨーク

コロナ禍のせいで活動もままならない時期が続きましたが、今年は5月に自分達のコンサートを久しぶりに開催した他、様々なイベントで歌う機会がありました。


そんな中、NYCGMCにトニー賞の授賞式で歌わないかというお話が来たのです。アンジェラ・ランズベリーという、映画・舞台・テレビで長く活躍した往年の女優さんにLifetime Achievement Award(生涯功労賞)を授与するにあたって、彼女の代表作であるミュージカル「Mame(メイム)」の主題歌を歌ってほしいとの依頼でした。加えて、授賞式のチケットももらえるとのこと。

アンジェラ・ランズベリーは現在96歳。トニー賞を過去に5度も受賞した、まさに生きる伝説のような女優で、私も彼女の初期の出演映画「ガス燈」を観たことがあります。

そんな大女優のトリビュートのために、何故うちのコーラスにお声がかかったのか?細かい経緯について私は知りませんが、NYCGMCのメンバーの1人がトニー賞のプロダクションチームと縁があり、この依頼に繋がったようです。


授賞式前の水曜午後にリハーサルがあり、式で歌う「Mame」の楽譜をもらって練習した後、実際にラジオシティ・ミュージックホールで入退場の段取りを確認しました。

その日、残念ながらアンジェラさんは授賞式に出席できないことを知りましたが、授賞式で私達が誰かのバックコーラスをするのではなく、私達のみがステージに立って歌うことも知り、みんなで興奮しました。


授賞式当日は、朝8時からラジオシティでの通しリハーサルに参加しました。私達の衣装は黒のドレスシャツ・黒のスラックス・黒の靴となっていて、黒のシャツだけはトニー賞から支給されました。朝のリハで私がシャツを着てみたらサイズが大きすぎたのですが、衣装担当の人が夕方の本番までにピッタリのサイズに直してくれました!

リハーサル後にコロナ検査があり、これで陽性になったら元も子もないので、数日前から人との接触に気をつけていましたが、無事陰性でホッとしました。

リハーサルとコロナ検査が終わると一旦解散になり、本番前の午後6時に会場に再集合しました。


授賞式のACT ONEが午後7時から始まり、私達の出番は午後7時半頃でした。一生に一度かもしれないこの機会にヘマをしないよう、ギリギリまで歌詞や音程をチェックしました。

出番前に舞台袖に行くと、他の出演者や小道具担当の人達が慌ただしく行き来していました。そして本番。ステージの幕が上がり、降りるまで約1分半。あっという間でしたが、忘れられない経験になりました。

NYCGMCのFacebookページから、私達が歌う映像を観ることができます!

The Tony Awards: Act One | The New York City Gay Men’s Chorus Performs “Mame”


出番が終わった後は、フォーマルな衣装に着替えて観客席へ向かい、授賞式を観ました。様々なパフォーマンスに感動したのは上述のとおりです。

長くなりましたが...、いつかまた違うかたちでもよいので、トニー賞の授賞式に参加してみたいと思いました。