歯の矯正 Part 1


アメリカに来て気付くことのひとつは、アメリカ人は歯がすごく綺麗だということ。歯並びも白さも。こっちの人の多くが小さいときから歯を矯正して、普段のデンタルケアにも気を遣っています。

日本でも最近は歯の矯正が広まっているらしく、歯列矯正体験のブログやユーチューブ動画もたくさんあるようです。

私が子供の頃は、矯正している子がクラスに一人いたかな?というくらい。その頃(80年代)のアイドル達は、目はパッチリと可愛くても、歯はガタガタだったり、八重歯がすごく目立っていたりして、それがチャームポイントとすら言われていました。(今になって当時のアイドルが歌っている動画を見ると、ビックリするほど。)松田聖子がアメリカに行っている間に歯を矯正した!なんてニュースもありましたが、当時日本ではたいして歯並びが重視されていなくても、アメリカでやっていくためには歯が命!ということでしょう。

私も、アメリカに移って数年経った頃から、歯列矯正に興味を持ち始めました。


1. 矯正する前

しかし、私は日本にいた頃かなり歯に無頓着な方で、定期的な歯の検診やクリーニングのために歯医者に通うという習慣がありませんでした。アメリカに来てからも、留学中は全く歯医者に行きませんでした。

そのため、ニューヨークで働き出してから初めて歯の検診に行ったとき、歯医者さんに驚かれました。歯石がびっしりで、虫歯もあると...まずは、歯石をあの引っかき棒のような器具でグリグリと除去され、口内が血だらけになりました。虫歯になっていた上の親知らず2本も抜かれました。そんな感じで、最初は3、4回くらい通わなければなりませんでした。

それまでフロスをする習慣がなかったので、歯のブラッシング以外にフロスも始めました(遅すぎ?)。ようやく普段からのデンタルケアの大事さを痛感することになりました。

それから5年くらい経ち、歯の健康状態がまともになって来たところで、歯列矯正を本格的に検討し始めました。私の場合、下の歯の並びは比較的マシだったのですが、上の前歯2本が大きく、ネズミみたいに少し前に出ていて、その横の歯が小さく奥に引っ込んでいたのが、ずっと気になっていたのです。


2. 矯正歯科医探し

ネットで歯列矯正(英語でOrthodonticsと言います)のお医者さんやコストの情報について調べていた頃、ちょうど会社の同僚で歯列矯正を始めた人がいました。その矯正歯科医のことを聞いてみるとなかなか良さそうだったので、見積りに行ってみました。

場所は、ミッドタウンのRockefeller Centerビル内で、職場からも近く通いやすそうでした。(ググってみれば、何という先生か分かると思います。)

先生はとても明るく元気の良い感じで、「Hey! Nice to meet you!!」とか言ってグッと強い握手をしてきました。先生は私の歯を一通り見た後、「インビザライン」という透明なマウスピースを歯に嵌めて歯列を動かしていく矯正を勧めてくれました。私は、できるだけワイヤーを使わずに歯を矯正できればな~と思っていて、事前調査でインビザラインのことは知っていたので、それでできるなら良かった!と安心しました。

本当は2,3件の矯正歯科医から費用の見積もりを取って検討した方がいいのでしょうが、私はとにかく早く始めたかったし、先生の感じも良さそうだし、提示された費用も想定の範囲内だったので、その場でお願いすることに決めました。


3. 矯正前の抜歯...

お金も払って、さぁ矯正を始めようというとき、私の歯のレントゲン写真(?)を見た先生から、まだ残っていた下の親知らず2本を抜く必要がある、更に前歯のずっと奥の方の「硬口蓋」と呼ばれるところにまだ出てきてない小さな歯があり(!)それも抜いた方がいい、と言われました。それらの歯があると、矯正中他の歯の骨や神経に悪影響を及ぼす恐れがあるとのことでした。

そして、歯を抜くのは矯正歯科医の先生ではなく、別の歯科医ということで、同じビル内の別の歯科オフィスに連れていかれました。想定外のことで、私は抜歯の恐怖と費用のことで一気に不安になりました...

しかし、歯を抜かないことには何も始まらないと分かった以上、とにかく早く済ませたかったので、まず下の親知らず2本を同時に抜いてもらいました。麻酔を使うので抜歯時の痛みはそれ程なかったのですが、時間が経つにつれてジンジン痛みだし...何より大変だったのは、下の歯の両側を使えないので、一週間くらいあまり噛まなくていい流動食ばかりで過ごしたことでした。空腹なのに食べ物をうまく食べることができず、辛い思いをしました(泣)。

親知らずの抜歯から一週間ほど経ってから、硬口蓋に埋もれている小さな歯も抜歯しました。この抜歯は結構大変だったようで、麻酔をして目を瞑っていたので実際のところ分かりませんが、歯医者とその助手が私の体に体重をかけてグイグイっと抜いているような感覚がありました。抜歯後は、親知らずのときと違って食べ物を噛むことへの影響はありませんでしたが、抜いた跡が治るまでしばらく要しました。

一連の抜歯の後、親知らずがなくなったせいか、あまり食べられずに痩せたせいか、頬がこけた?と周りの人に言われたものでした。


4. 矯正中

そうしてやっと矯正が始まりました。今の歯列から、コンピュータを使って計算(想定)されたキレイな歯列へ徐々に移行するために、インビザライン用マウスピースが16個(上下1セット)送られてきました。全てに番号が付いていて、1番のマウスピースをまず嵌め、半月ほど経ったら2番のマウスピースに移る、といった流れです。つまり、計8ヶ月の矯正期間でした。

最初のマウスピースを装着したときの写真。
なんか汚ったないですが、一生懸命口開けてます(笑)

マウスピースの一日の装着時間は22時間!つまり、食事のとき以外はずーっと着けてないといけません。装着時に水など無着色の飲料は飲めますが、コーヒー、お茶、ワイン等は着色の原因になるのでNG。その他、装着時には熱い飲み物(マウスピース変形の原因)や甘い飲み物(虫歯の原因)も避けるように言われました。

インビザライン矯正時の私の生活は、朝食・昼食はだいたい30分以内、夕食は1時間以内に済ませ、食後すぐに歯を磨いてマウスピースを装着するというものでした。友人や仕事関係者との食事の際には、食べる直前にトイレに行ってマウスピースを外し、食べ終わったらまたトイレに行って装着していました。仕事中のコーヒーや間食は全くしませんでした。

今となっては、よくそんな修行僧のようなことができたな〜、と信じられないですが、せっかく始めた歯列矯正を失敗することなく終わりたい!という強い気持ちがあり、基本的には22時間ルールを守っていました。

マウスピースを装着し始めた頃は確かに不快感があり、軽い頭痛を感じることもありましたが、一週間も経つと慣れました。半月毎に新しいマウスピースを付ける際も、そんなに違和感や痛みはありませんでした。透明でしっかり歯に装着したマウスピースなので、傍から矯正を気付かれることはほとんどありませんでした。ただ、ちょっと話しにくいということはありました。


5. 費用

やっぱり誰もが気になるのは「いくらかかるのか?」ということですよね。私の場合、インビザライン矯正の費用は6,000ドル弱。マンハッタンのミッドタウンという場所柄を考えると、まぁ納得のお値段でした。

ニューヨークでも、中心部から離れた場所の矯正歯科医であれば、もっと安くやってもらえると思います。ただ、何かあったときすぐ駆け付けられるようにするためにも、歯科医は職場か自宅から近い方が良いと思います。

費用の払い方は、私のデンタル保険プランが生涯2,000ドルまでの矯正費用をカバーしていたので、まずそれを使い、残りをFlexible Spending Accounts (FSA) で支払いました。FSAというのは、年間ある一定額を医療費用としてFSA口座に積み立てると、それを税前費用として落とせるというものです。つまり、その分節税効果が得られます。アメリカでは多くの会社が提供しているプランです。年初に「今年は矯正をする!」と決めて、FSA口座を開いていました。

しかし、上記のとおり、矯正を始める前の抜歯費用が別途かかりました。抜歯をした歯科医が私のデンタル保険のネットワーク外だったので、まず自腹で2,000ドルくらい払い、その後保険会社に請求して70~80%くらい戻ってきたと記憶しています。

さらに、矯正費用以外に、矯正後も歯列が動かないように装着するリテーナーを購入することになり、それが4つセットで1,100ドルでした。こちらは翌年のFSAで支払いました。リテーナーにそんなにかかるとは思っていませんでしたが、これは後で問題になります...


では、矯正した結果は? 次回、その感想や後日談を。