ミュージカル「Some Like it Hot」鑑賞

映画「お熱いのがお好き」

「お熱いのがお好き(Some Like it Hot)」は、1959年に制作・公開されたコメディ映画の名作です。監督はビリー・ワイルダー、主演はトニー・カーティス(ジョー役)、ジャック・レモン(ジェリー役)、マリリン・モンロー(シュガー役)。これだけ揃って面白くないはずがない!と思えるような顔ぶれです。

同年のアカデミー賞では主要部門を受賞できませんでしたが、ゴールデングローブ賞ではミュージカル・コメディ部門の作品賞、主演男優賞(ジャック・レモン)、主演女優賞(マリリン・モンロー)を受賞したようです。また、American Film Institute(AFI)という映画団体が2000年に選出したアメリカの喜劇映画ベスト100で堂々の第1位(!)に選ばれており、この映画がコメディの傑作としてどれ程高く評価されているかを示しています。

最近の映画(私はそんなに見ていないのですが)と比べると、1950年代以前に作られたような古い映画は展開がゆっくりしているものが多いので、スマホ世代の若い人達は最後まで集中力が続かないのではないかな...と思ったりするのですが、この「お熱いのがお好き」は始まりから小気味良いテンポで話が進んでいき、「こんな女装でバレない訳ないじゃん!」という野暮なツッコミも入れながら、クライマックスへとなだれ込んで行くような感じです。


映画とミュージカルは、前のページの感想で紹介したような違いを除けば、あらすじ・構成はほぼ同じです。キャスト達のセリフのやり取りも秀逸でユーモアに溢れていて、ビリー・ワイルダーの腕が冴え渡っています。

映画の一番最後は、ジェリー(ダフニ)がしつこいオズグッド3世を諦めさせるため、カツラを剥ぎ取って「俺は男なんだよ!」と白状すると、それを聞いたオズグッド3世が「完璧な人はいない。( Nobody’s perfect.)」と答えて、「The END」となります。オズグット3世が性別に関係なく人としてジェリー(ダフニ)を好きになったのか、単に歳をとってボケしてまったのかは分かりませんが、そんなことは別にどうでも良く、性的指向の多様性を受け入れようというメッセージがあるわけでもありません(今から60年以上も前の映画ですから)。とにかく最後まで徹底してコメディです。


映画は白黒で撮影されました。その当時カラー映画は当たり前にあったのですが、カラーだと男二人の女装姿の刺激が強いのでモノクロになったと言われています。

また、撮影時のマリリン・モンローが精神的に不安定で、セリフを覚えられずに同じシーンを何度も撮り直すことになる等、現場は大変だったというエピソードもあります。監督のビリー・ワイルダーも撮影中かなり疲弊したようですが、それでもスクリーンに映し出されるマリリンの比類ない素晴らしさやコメディ女優としての天賦の才能については認めざるを得なかった、と語っていたようです。(ビリー・ワイルダーの自伝より)

さらに、この頃マリリンは妊娠していたらしく(流産してしまいますが)、それも精神状態に影響したようです。言われてみると、彼女の体のラインが少しだけふくよかに見える気もします。


撮影時のエピソードを聞いても、この映画でのマリリンの屈託のない笑顔や歌っている姿・歌声にはやっぱり魅了されてしまいます。他の女優さんでは全く違うものになっただろうなと思います。

とにかく、私のお気に入りの一つでもあるお勧めの映画です。機会があれば、映画とミュージカルを両方観て比べてみると面白いと思います!


お熱いのがお好き(Some Like it Hot)