私は、アメリカのニューヨークで暮らしている40代後半のオジサンです。早いもので渡米してもう18年になります。この歳になっても独身で好き勝手に生きており、世間的には通常ルートから外れた人生ですが、こんな私でも若い人達や子供を持つ親御さんから時々質問や相談を受けることがあります。
同級生の子供がもう大学生や社会人になっていたり、ということが今では珍しくなくなりましたが、子供のいない私であっても、若い世代の方々には将来に希望を持って頑張ってほしいし、彼らにとって生きやすい社会になることを願っています。そして自分が何かお役に立てるのであれば、(老害にならない範囲で!)相談にも答えたいと常々思っています。
ということで、よくある質問に対して「海外に長く住んでいる大人」としての私なりの回答をまとめてみました。私自身何歳になっても悩みは尽きないもので、若い人に偉そうにアドバイスできるような人間でないことは重々承知していますが、こういう意見もあると参考にしてもらえれば幸いです。
1.若いうちに海外の生活を経験した方がいい?
私は基本的に「最後は自分の直感に従って決めれば良い」という考えなので、興味があるなら海外に出てみれば良いし、全く外国に興味がないなら無理に行く必要もないでしょう。ただ、そんなこと言ったら元も子もないので...、私の立場からすれば、やっぱり若いうちに一度は海外へ行ってみることをお勧めします。
まずは、数日でも良いので興味のある国へ海外旅行をしてみて、自分の肌で日本の外の空気を感じてみるのが良いですね。できれば、ホームステイなり短期留学なりで現地の人達と触れ合って生活する機会があればなお良いと思います。
海外に行ってみることのメリットとして、訪れた国を実際に見て体験することができるのは当然ですが、私は国外から自分の国を見直すことができる点も大きいと思います。多くの人は「日本がいかに良い国であるか」を改めて知ることになるのではと思います。
初めてアメリカへ旅行をして、毎食ハンバーガーやサンドイッチを食べていれば、数日と経たないうちに「日本の食事が恋しい」と思う人も多いでしょう。(ニューヨークではいくらでも日本食食べられますが。)また、現地のスーパーでの店員の態度に接して、日本のお店の店員がいかに親切で丁寧かを知るかもしれません。今であれば、食事や商品のクオリティに比して値段が異常に高いことに愕然とするかもしれません。
そこで、「アメリカのサービスは日本より劣っている」とか結論してしまうのは違うと思うのですが、外国と日本との違いを体験しながら日本の良さを再発見することができます。
逆に、訪れた国のことが好きになり「日本を抜け出してここで暮らしたい!」と思うようになったら、それこそ海外に行ったおかげで気づいて良かった、ということになるでしょう。私自身、初めてニューヨークを訪れたときに感じた刺激が今の生活に繋がっていることを思うと、あのときニューヨークに旅行してなかったら自分はどうなっていただろう...と不思議な気持ちになります。
もしホームステイや留学などで海外で暮らすことになれば、現地の習慣や文化をより深く学ぶことができます。
特に私の住むニューヨークのような街であれば、様々なバックグラウンドを持つ人達と触れ合うことができます。ここには中国人や韓国人も多いですが、日本に居れば何かと敵対的な印象を持ってしまいがちであっても、実際に会って話してみれば、同じアジア人ということで安心感を感じたり気があったりするものです。また、それ程多くはないですが、ロシア人やウクライナ人と知り合う機会だってあります。ニュースを通じてしか知らない国の人でも、実際に触れ合えば、みんな同じ人間で同じように様々な問題と向き合いながら生きているんだな、と感じるかもしれません。
それから、海外で暮らしていると必ず聞かれるのが、自分の国・日本についてです。日本のカルチャー、食べ物、歴史のことなどをアレコレ聞かれて、「あぁ、自分は日本のことを何も知らない。知っているつもりでも上手く説明できない。」と痛感する人も多いはずです。日本とはどういう国なのか、改めて学ぶきっかけにもなります。
さらには、日本で生まれ育った自分とはどういう人間なのだろうか、これからの人生をどう生きたいのか、という問いに真剣に向き合うことに繋がるかもしれません。単に日本に住みたいか、海外に住みたいか、という場所のことだけではありません。自分の視野を広げ、人生に選択肢がたくさんあることを知るという点で、できれば若いうちに海外に出てみることをお勧めしたいです。
2.海外で働いてみたいのだけど...
ホームステイや留学をするだけでなく、海外で働きたいという希望を持つ人となると、その数はかなり限られてくるでしょうが、海外の大学や大学院で勉強した学生なら、そのまま現地に残って働きたいと考えるのは自然なことかもしれません。
しかし、実際に海外で働くとなると、自分の能力を超えた問題が出てきます。
日本人が外国で働くためにはその国の就労ビザをとる必要があります。私が知っているアメリカの場合、学校を卒業したらH1Bという就労ビザ(高度な専門知識を要する職業のためのビザ)をとって働くのが一般的だと思いますが、毎年申請者の中から無作為抽選で選ばれた人のみがビザを取得できる制度になっているので、運次第というところがあります。採用する企業側にも採用される学生側にもリスクがあります。
アメリカでは、その他にもL1(駐在員用のビザ)、E1(投資家用のビザ)、J1(トレイニー(インターン含む)のビザ)、O1(アーティスト等のビザ)など様々な就労ビザがありますが、それぞれに細かい条件があり、私はその専門ではないので詳細は控えます。
さらに、長期間滞在したいなら永住権(グリーンカード)を取得する手続きに進む必要がありますが、とにかくビザの問題に関しては自分の能力や努力ではどうにもならないこともあり、場合によっては時間やお金をかなり費やさざるを得ないため、自分でよく調べ、専門家にも相談した上で、ビザを申請するかどうかを決める必要があると思います。
ビザの問題がクリアできる限り、海外で働きたい意志があるなら挑戦してみればいいと思いますが、ただ「何となくカッコ良さそうなので海外で働きたい」というのではなく、「自分は何をしたいのか?それは日本ではできないことなのか?」ということをしっかり考えた上で決めた方が良いでしょう。
「英語をネイティブ並みに話せる自信があるので英語の環境で働きたい」という人でも、英語ができるのはアメリカであれば当たり前なので、その上でどんな技術やスキルを持っているかの方がずっと大事になってきます。私の周りには、英語がそれ程流暢でなくても仕事のスキルが高いので周りから信頼され、出世している人は多くいます。
一方、現地の言葉(アメリカなら英語)でのコミュニケーションにあまり自信がない場合、海外でも日本でも同じようにできる仕事なら、母国語を喋る日本で働いた方がより自分の能力を発揮しやすいということもあるでしょう。
とにかく、長い人生の中で自分のキャリアをどうするかは大事な決断です。「海外でやりたいことに挑戦してみたい」という情熱があり、その実現に向けてよく考え準備したのであれば、一度きりの人生ですからぜひ挑戦してほしいと思います。
近年日本人の若者が内向きになっているという話をよく聞くので、世界を股にかけて活躍するような日本人が将来増えてほしいと期待しています。
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