今年日本では「年金2000万円問題」が世間を騒がせました。2000万円という数字が独り歩きしてしまいましたが、問題の発端となった金融庁の報告書には、国民それぞれが公的年金だけに頼らず自ら資産形成をするように促す狙いがあったようです。
老後の年金への不安はアメリカだって同じ。私達がどこで老後生活を送るのであれ、不安はついて回ります。
前回の投稿では節約や貯金についてお話ししましたが、ただ貯金するだけでなく、資産の運用によってリスクを取りながらもお金を増やす(お金に働いてもらう、と言いますね)ことができれば、将来の不安も軽減できます。
もともと「石橋を叩いて渡る」ような性格であった自分が、これまで取り組んできた資産形成についてお話ししたいと思います。
まず、私が言う「投資」とは、デイトレーダーのように短期の売買による利益を狙うものではなく、中長期的な目標(例えば住宅購入や老後のため)を目指して行うものです。ですので、以下の内容は、投資をやってないけど興味を持っている人、または投資初心者の方向けになっています。
1. 定期預金(Certificate of Deposit)
と言って、最初は「投資」ではないのですが...、アメリカの定期預金として一般的なCertificate of Deposit (CD)です。日本語訳は譲渡性預金ということで、預金者が市場で自由に譲渡できる預金であることから、このように呼ばれるようです。
CDは、1か月物~10年物まで幅広い預入期間があります。また、FDIC-Insuredの対象です(もし銀行がつぶれても、預金残高合計$250,000まで保証される)。預金なので満期前に引き出しはできませんが、期間の途中でも市場で売買できます。この辺はかなり債券に近いです。
私がニューヨークに住み始めた2007年頃は、1年物で4%くらいの利率のCDがあった記憶があります。それが、2008年の金融危機(いわゆるリーマンショック)に伴い、連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を大きく引き下げたことで、CDの利率も下がりました。CDの利率が一番低かったのは、2013年~2015年あたりでしょうか。当時、私がメインで使っているバンカメのCDの利率は1年物で0.1%以下と、日本の銀行の定期預金並みでした。ネット系銀行ではもっと高い利率を提供していたと思います。
2016年頃からFRBが金利を上げ始めたことで、CDの利率も上昇傾向となり、2018年~2019年前半までは、私が使う銀行のCD利率は1年~2年物で2.0%前後まで回復しました。しかし、2019年後半から金利の引き下げが始まり、CD利率もまた下がり始めました。
アメリカのインフレを考慮すれば、十分に高い利率と言えないかもしれませんが、もし貯金を普通預金口座(Checking Account)に寝かせているだけであれば、ある程度金額がまとまる度にCDに移すようなことをしてもいいかもしれません。特に、1~2年後くらいに用途が決まっているお金があれば、元金を減らさずに比較的高い利息を得られるCDは良い選択肢だと思います。たいていの銀行は、預金残高が一定額を超える顧客や、ある一定額以上を毎月振り込む(給与など)顧客に対して、高めのCDレートを設定しています。
2. 外貨預金
私が渡米する前、日本で外貨預金やっていました。特に、海外の高金利通貨(オーストラリアドルやニュージーランドドル)の定期預金口座を作り、高い金利を得て、あわよくば為替差益を狙うことが目標でした。渡米後は、米ドル口座を若干残している程度です。
外貨預金は、よく似ているFXと比較されます。
- 手数料...外貨預金の最大のデメリットは、FXと比べて為替手数料がかなり高いこと。大手都銀などの外貨預金の為替手数料は片道で(例:円→ドル)1円くらいかかるようですが、FXの為替手数料は0.3〜0.5銭とのこと。外貨預金の方が割高ですね。一方で、ネット系銀行の外貨預金の為替手数料はかなり安くなっています。
- 売買...外貨預金では、外貨が安いとき(円高)に買って、高くなったとき(円安)に売ることでしか為替差益を得ることができません。一方FXでは、外貨を安く買って高く売ることでも、高いとき空売りして安く買い戻すことでも、利益を上げることができます。どちらであれ、為替がどう動くか見通しを持つことが必要です。
- レバレッジ...外貨預金は自分が預けた金額の範囲での取引ですが、FXはレバレッジを効かせれば自分の資金より大きな額(25倍とか)で取引することができます。なので、FXでは大儲けできるチャンスがありますが、逆に言うと大損する可能性もあるということです。
- 利息...外貨預金では満期時に利息を受け取ることができますが、FXでもスワップポイントという利息と同様のものを毎日受け取れるとのこと。
- 預金保険制度...外貨預金は預金保険制度の対象外(銀行が倒産したら保護されない)ですが、FXは預けた資金が信託保全されるようです。
基本的には、外貨預金のデメリットが多いと言われます。
外貨預金は、通貨リスクの分散という点で選択肢になると思いますが、最近どの国でも金利が下がっていますし、これ以上大きく円安に動くこともなさそうなので(?あくまで自分の予想)、あまり旨味はないかもしれません。FXはやったことないので何とも言えませんが、為替の動きについて自分なりの見通しを持っているのであれば、やってみるといいかも。
3. 株式
投資と言って、たいていの人が一番最初に思いつくのは株式投資でしょう。昔(バブルの頃とか)は、株購入の最低単位が1000株とかだったのでまとまった元手が必要でしたが、今はお手頃な資金で買えるようになりました。取引手数料も以前よりずっと安く(もしくはタダに)なったし、証券会社の店頭に行ったり電話したりしなくても、オンラインで簡単に株が購入できるようになりました。随分敷居が低くなったもんだと思います。
私は、1999年に証券会社で株式口座を開きました。当時は新しいインターネット関連企業が市場をけん引し、株価もどんどん上がっていたので(いわゆるITバブル、ドットコム・バブル)、私もこの波に乗ってイケイケ!という感じでしたが、翌年にバブルもあっけなく弾け、初めての株式投資の開始早々から涙を飲むことになりました。
アメリカに移ってから、私は凝りもせずまた株式口座を開設しました。世界最大の株式市場があるアメリカに住んでいて、株式投資をやらない手はない!と思いながら。それが2007年。サブプライム問題が取りざたされ、株式市場が不安定になって来ていた頃です。そして、翌2008年秋にはリーマンショックで株式市場は世界的な大暴落となり...またまた涙。
しかし、一度バブル崩壊を経験していた私は、長期的にはこういう局面でこそ買わなければならないと学んでいたため、頑張って株式投資を続けました。買い増した後で更に株価が落ちていくという、まさに落ちるナイフを握るような恐怖も経験しましたが、短い我慢の期間を経て、2009年後半には株価は急回復しました。
それ以降2019年現在まで、振り返ってみれば色々な乱高下がありましたが、株式市場では基本的に上昇基調が続き、投資を続けて良かったと思っています。欲を言えば、リーマンショックの大暴落時にもっと仕込んでおくんだった!という思いもありますが、そこはなかなか難しいものです。
私が最初に買った米国株はMicrosoftでした。この株価は私の保有期間中ほぼ一貫して上昇し、配当率も高いです。リーマンショック以降株式市場の成長をけん引してきたGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の中では、Google(の親会社のAlphabet)の株を持っていますが、私の持ち株の中では取得時以降で最も株価が上昇したようにと思います。一方で、全然儲からずに手放したものもあります。例えば、Citi Groupの株価はリーマンショック後に1/10くらいまで下がり、その後もたいして戻りませんでした。私のこれまでの株式投資の成績をまとめれば、結局はアメリカ市場全体(S&P500のインデックス)並みになるのかな〜と思います。
株トレードで日銭を稼ぐ訳ではないなら、とにかく長期投資、分散投資を心掛け、短期的な価格変動リスクを受け入れる覚悟があれば、株式投資をやってみることをお勧めします。経済の動きに敏感になり、勉強にもなります。ただし、リスク分散の観点からは、個別株よりも次で紹介するETFの方がいいと思います。
ちなみに私は、TD Ameritradeの口座を開設して使っています。
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