コロナ禍での家計管理と資産形成 Part 3

  • August 20, 2020
  • August 20, 2020
  • お金


ブログの前2回で、家計管理・資産形成のポイントについて紹介しました。

具体的に、Part 1では、自分の収入の一定割合(少なくとも10%)を貯蓄に回し、まずは生活防衛資金を貯めること、Part 2では、さらに貯まったお金を運用する、具体的には「アメリカ株式インデックス(ETF)」に「ドル・コスト平均法」による積立てで「長期投資」することをお勧めしました。

投資初心者やあまり投資に時間・労力を割きたくない人を念頭に、出来るだけシンプルに、何に投資すれば良いか紹介するだけであれば、それで終わって良かったのですが...、他の投資の選択肢を知りたい人もいるでしょうし、もちろん選択肢はたくさんあるので、今回その一部を紹介したいと思います。


高配当株投資

資産形成や投資などに関するYouTube動画を見ていると、株式インデックス投資と並んでよく取り上げられ、推奨されているのが「高配当株投資」です。

文字どおり、配当利回りが高い会社の株式に投資する手法のことです。株式会社は、各期(通常アメリカでは四半期毎、日本では半期毎)の最終利益の一部を配当金という形で株主に還元します。きちんと利益を生み出し続けている会社は、その分配当金を株主に支払う余裕があることになります。

私達が株式投資からリターンを得る方法は基本的にふたつ、①買ったときより高い株価で売って売却益を出す(キャピタルゲイン)か、②配当金をもらう(インカムゲイン)か、どちらかです。高配当株投資は、②のインカムゲインにより注目した投資法です。


高配当株投資のメリットは、何と言っても定期的に高い配当金(インカムゲイン)をもらえることです。現在、アメリカ株インデックスETFの配当利回りは2%弱程度であるのに対し、アメリカ株高配当株ETFの配当利回りは3〜6%となっています。配当金をさらに投資に回せば、投資の複利効果が期待できますし、配当金額が多くなれば、不労所得として生活費の足しにすることも可能です。

以前のブログで紹介したFIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指している人達には、この高配当株投資を行なっている人が多いです。早期リタイアするためには、不労所得の基盤を早く作る必要があり、高配当株投資は有利になります。


ただし、高配当株投資のデメリットもあります。高配当株ETFの構成銘柄を見ると、金融、エネルギー、通信、消費財、不動産といったセクターの企業が大きな割合を占めています。かなり歴史のある大企業も多く入っています。(JPモルガン、エクソンモービル、AT&T、P&Gなど)

これらの企業は、安定して利益(そしてキャッシュフロー)を出している優良な企業ではありますが、あまり大きな成長要素がないのも事実です。成長性がないので、大きな事業投資を行う必要もなく、残ったキャッシュを株主に配当として払っているとも言えるのです。

一方で、今の世界経済をリードするアマゾン、グーグル、フェイスブックといった企業は、現在配当金を一切払っていません。事業で稼いだお金を株主へ配当するより、新しい技術開発や設備への投資、他社の買収にどんどん回して成長を続けた方が、最終的には株主の利益になるという判断からです。

そして、このコロナ禍に高配当企業の株価、また高配当株ETFの価格は大きく下落し(エネルギー関連株のように、必ずしもコロナの影響と直接関係なく下落した株もありますが。)、その後の回復も遅れ気味です。それに対し、アマゾンやグーグルの株価は、コロナの影響も大して受けずに上昇を続けています。


アメリカ株インデックスには、高配当の会社も高成長(アマゾン、グーグル等)の会社もどちらも含まれています。そう考えると、長期スパンでの資産形成が目標である場合、やはりインデックス投資の方が有利になるでしょう。将来に備えて資産を築いていきたいならインデックス投資、先のことより今もらえるお金の方が大事なら高配当株投資、ということでしょうか。

個人的には、インデックス投資をメインにしつつ、高配当株投資をやってみるのもいいと思います。定期的に、高い配当金がもらえるというのは嬉しいもので、投資へのモチベーションにもなります。


では、具体的なアメリカ高配当株ETFを紹介します。これもインデックスETFと同様に、アメリカの主要なファンド運用会社3社(Vanguard, Blackrock, State Street)が以下のETFを販売しています。

  • Vanguard High Dividend Yield ETF (VYM)
  • iShares Core iShares Core High Dividend ETF (HDV)
  • SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF (SPYD)

この中では、VYMが最も歴史が長く、運用額の規模も最大です。しかし、配当利回りは時点(8月19日)でVYMが3.6%と一番低く、HDVが4.9%、SPYDが5.9%となっています。経費比率はどこも0.06〜0.08%で、非常に低く魅力的です。

高配当株ETFなんだから配当利回りが高くないと意味ないだろう!という点からは、SPYDが一番良いように見えますが、コロナショックによる暴落が一番酷かったのもSPYDだったことを留意しておく必要があります。

アメリカ株インデックスETFと同様、これらのアメリカ高配当株ETFについても、日本でも楽天証券やSBI証券といったネット証券で購入できるようです。また、日本でアメリカ高配当株ETFに投資する場合は、ドル/円の為替リスクがあります。


債券投資

資産形成のための投資対象として、株式とともに代表的な資産が債券です。

「株」を買うことが会社の所有者になることなら、「債券」を買うことは国や会社の債権者(お金の貸し手)になることです。私達は、債券を買ってお金を貸すことで、定期的に利子を受け取り、満期になると元本を返済してもらいます。債券は、国(国債)や会社(社債)によって発行されます。発行体によって信用リスク(ちゃんと返済できるか)が異なるので、Standard & Poor’sやMoody’s のような第三者の格付機関が債券の格付け(AAA, AA, A, BBB… など)を行っています。

債券の利率は発行時に決まっているので、安定したインカム・ゲインを得ることができる一方、決まった利子以上をもらうことはできません。そういう意味で、株式投資と比べると債券投資のリスクは低く、またリターンも低いです。


債券は市場で取引されていて、発行後の債券価格は変動するのですが、「市場金利が上がると価格が下がり、市場金利が下がると価格が上がり」ます。一般的に、景気が良く株価が上昇傾向にあるときには、市場金利も上がって債券価格が下がります。つまり、株価と債券価格は逆相関の関係にあると考えられています。そのため、資産運用においては、株式だけでなく債券にも投資することで、リスクを分散することが勧められています。

では、株式を何割、債券を何割にすれば良いのか?という疑問が当然出てきますが、これについては各人のリスク許容度が異なるため、ひとつの解はありません。よく、「100 − 自分の年齢 = 株式の割合」、つまり「自分の年齢 = 債券の割合」という考え方が紹介されています。つまり、40歳であれば株式60%、債券40%になるように資産を配分するということです。

老後に向けた長期的な資産形成を考えれば、若い頃はリスクを取れるものの、老後が近づくに連れてリスクを抑える必要があるので、徐々に債券の割合を上げていくという傾向そのものは合理的だと思います。

しかし、近年債券によるリスク分散効果が疑問視されています。リーマン・ショックのときも今回のコロナ・ショックでも、株価が下がると同時に債券価格も下がりました。市場が急激に悪化したとき、投資家は株も債券も売って手許のキャッシュを増やそうとしたのです。また、現在は市場最低に近い金利水準が続いていて、債券を買って保有していてもあまり旨味がない状況です。だから、もう少し株式の割合を上げた方が良いという主張もあります。


株式投資と同様に、債券投資もひとつの会社のものを買うよりは、様々な国債・社債を含むファンドやETFを購入する方が、選ぶ手間やリスク分散の観点から良いと思われます。

私自身は、あまり債券の割合を高く設定しておらず、債券ETFについてそれ程詳しくないのですが、規模の大きいアメリカ債券ETFを以下紹介します。

  • iShares Core U.S. Aggregate Bond ETF (AGG)
  • Vanguard Total Bond Market ETF (BND)
  • iShares iBoxx $ Investment Grade Corporate Bond ETF (LQD)

AGGとBNDは、どちらもアメリカの投資適格(格付でBBB以上)債券全体を広くカバーするETFです。LQDも、アメリカの投資適格社債によって構成されるETFではありますが、AGGやBNDと比べて、BBB格付(投資適格の中で一番低い)債券の割合がかなり高く、信用リスクが高い分リターンも高くなっています。