6月になりました。
ニューヨーク州では、新型コロナウィルスの感染が抑えられてきていて、経済活動の再開が少しずつ進んでいます。ニューヨーク市については、前回のブログにも書いたとおり、6月8日(月)から第1段階の業種の再開が予定されています。ところが、報道されているとおり、先週末から全く別の問題が生活に影響してきています。
コロナの現状
まずはコロナですが、6 月3日時点の新型コロナウィルス感染者数・死者数は以下のとおりです。
- アメリカ合衆国:感染者 1,892,425、死者 108,635
- ニューヨーク州:感染者 382,824、死者 30,134
- ニューヨーク市:感染者 201,806、死者 21,688
(アメリカとニューヨーク州の情報はWorldometer、ニューヨーク市の情報はNew York Cityのサイトを参照。ニューヨーク市の死者数は、コロナ陽性と診断されていた死者(Confirmed Deaths)と、コロナ陽性と診断されていなかったが死因がコロナと推定された死者(Probable Deaths)の合計。)
最近の傾向として、ニューヨーク州・市では新たなコロナ感染者数・死者数が順調に減少している一方、ニューヨークを除くアメリカ全体では未だに感染拡大が続いているように見えます。感染拡大の防止と社会経済活動の再開、どのように折り合いをつけるかはとても難しい判断です。自分の中でも、早く再開してほしいという期待とコロナへの恐怖が、心の中で交錯しています。
抗議デモと暴動
先週の5月25日、ミネソタ州のミネアポリスで黒人男性の George Floydさんが白人警官に押さえつけられてそのまま死亡するという事件が起こりました。きっかけは、20ドルの偽札を使った疑いで、Floydさんが警官から捕まえられようとしていたようです。死亡させた警官は殺人罪で逮捕・起訴されました。
このニュースが報道され、また警官が黒人男性を膝で地面に押さえつけている映像がSNS等で拡散されるに連れて、警察官の黒人への暴力に対する抗議デモが一気に全米に広まりました。
黒人が警官によって殺される事件はこれまでに幾度も起きていて、その度に「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」というスローガンのもと、抗議デモが起きていました。日本語訳で「黒人の命(も)」となっているのは、これに対して「All Lives Matter(全ての命は大切だ)」という言葉もあり、「Black Lives Matter」は、黒人の命が他の人種の命よりも大切だという意味ではないことを示すためです 。ただ、アメリカでは黒人と比較して明らかに白人に特権があり(黒人が警官に殺される割合は白人が殺される割合の2倍以上高いという統計データもあるとのこと)、だからこそ「Black Lives」の大切さを強調しなければならないという背景があります。
今回は、いつまでも同じような事件が起き続けることへの怒りや苛立ちもあって、非常に大きな、そして暴力的なムーブメントに発展しています。もちろん、コロナによる外出制限ために多くの人の中に鬱屈していたものがここで一気に爆発したという側面もあるのかもしれません。
先週末には、デモ隊の人達が暴徒化して、警官を攻撃したり、パトカーを壊したり、挙句には街角に火を点けたり、店舗の入り口を壊して店内の品物を略奪したり、ということまで起きています。破壊行為や略奪となると、もう抗議デモの目的とは関係なく、許せない行為なのですが、こういった暴力がデモとは関係ない別の組織によって扇動されているという話もあります。
トランプ大統領は、暴徒化した抗議デモを鎮圧するために 米軍を派遣する可能性も示唆しました。州によっては、すでに州兵が動員されています。
また、報道では恐ろしい暴力行為の光景が繰り返し報道される一方、大半のデモは平和的に行われており、暴力を振るっているのは一部のみだという声もあります。一部の暴徒のために、抗議デモで訴えたいことが歪曲されてしまうのは残念なことです。
大勢のデモ隊が密集して街を練り歩く映像を見ると、Social Distanceは守られておらず、マスクをしていない人も多数いるようです。もうコロナどころではないということなのか?これが、 今から2週間程経ってコロナ感染の再拡大を示す数値に表れないことを祈ります。これまでの外出制限の努力を無駄にしないためにも。
私自身は、もともとアメリカの政治問題に強いポジションを持っていないのですが、ニューヨークに居るせいもあるのか、私の周りにはリベラルな立場から政治について発言し積極的に活動している人が多いのです。彼らが話すことやFacebook等のSNSへの発信を見ていると、自分達が動かなければ世の中は変わらない、自らの発言や行動で世の中を変えていかなければならない、という強い信念を感じることがあります。やはり、自らの手で独立を勝ち取ったアメリカという国のスピリットが根底にあるのでしょうか。
今回も、そういった友達の多くが抗議デモに実際に参加して、その様子をFacebook等に随時アップしています。中には、先週末のデモ中の暴動に巻き込まれて逮捕された人もいました。その人は、暴力を振るった訳ではなく現場を撮影していただけのようで、数時間で解放されたようですが。こうして、今起こっている問題が身近に感じられてくると、自分が何もせずにここにジッとしていていいのか?じゃあ今何をすべきなのか?という思いが色々と浮かんできます。
とにかく、混乱の最中にあるアメリカ、ニューヨーク。混乱を受けて、ニューヨーク市では月曜日から夜間外出禁止令(curfew)が発令されました。夜間外出禁止は6月7日まで続くようです。ちょうど6月8日から第1段階の活動が再開されようとしている矢先、予定どおり無事に再開できるのでしょうか...?
最後に、破壊や略奪行為に備えて、店舗の出入り口が板などで塞がれている街の写真を載せます。とにかく、これ以上暴力行為が起こりませんように。