前回の資産形成振り返りブログでも書いたとおり、昨年10月に長年働いた会社を退職しました。ちょうど齢50にしての決断でした。
今後については考え中で、リタイア生活を始めます!とは言えないのですが、FIRE(Financial Independence, Retire Early)のために必要な金融資産額には到達したと判断しました。そこで、FIREを目指してきたこれまでの道のりを振り返り、自分なりの反省点、また今後のことについて書きたいと思います。
FIREに向けた資産形成
「FIRE」という言葉を初めて聞いたのは2018年頃でした。会社の同僚と話をしている中で、早期に経済的自立の達成を目指すFIREという生き方を知り、昔から何となく「いつか不労所得で生きていけるようになればいいな〜」と夢見ていたことを思い出しました。
それまでにも株式投資はやっていたのですが、その時々で得た情報や適当な気分で売買をしている感じだったので、もっと計画性を持って投資を仕組み化していこうと決めました。まずは米国株インデックス(いわゆるS&P500)のETFの定期的な購入(ほぼ積み立て)を進めました。しばらくして、不労所得を積み上げたい思いから高配当・連続増配株・ETFや債券への投資にも徐々に比重を置いていきました。(この点は、今になって正しかったのか?と考えます。)
同時に、仮想通貨への投資も始めました。仮想通貨は投資より投機といった面もあり、長期的にどうなるかは分かりませんが、少なくとも現時点では全ての資産クラスの中で最も高いリターンを出しています。
家計の見直しも行い、自分がお金を使いたいもの(旅行、娯楽等)とそうでもないもの(食事、服等)で出費にメリハリを付けるようにしました。FIREの肝とも言える貯蓄率(= 貯蓄額/手取り収入)は、2018年以降40〜45%辺りを目処にしていましたが、2020年に新型コロナ感染拡大であらゆる社会経済活動が停止してしまい嫌でも出費が減ったので、結果的に貯蓄率を50%以上にする癖がつきました。これはFIREの目標額達成を早めるのに役立ちました。
振り返って思うのは、やはり計画と継続が一番大事だったということです。自分が投資したものが、自分の期待どおり、あるいは専門家の予測どおりのリターンを上げることはほとんどありません。それでも、相場環境が良い年であれ悪い年であれ、自分の方針がブレないよう投資を継続したことが目標達成に繋がったのだと考えています。
4%ルール vs 4.7%ルール
前回のブログでも触れたことですが、FIRE達成に必要な目標額を設定する上で「4%ルール」が広く知られています。具体的には、退職資産の4%を取り崩すことによって一年の支出額を賄えること、つまり年間支出額の25倍(= 100% / 4%)となる資産額を築くことが必要と言われています。
4%ルールは、1994年にファイナンシャル・アドバイザーのWilliam Bengen氏によって提唱されました。1998年にTrinity大学により発表された「Trinity Study」では、1925年以降の長期の米国市場データをもとに「株式50%以上のポートフォリオで毎年4%ずつ取り崩した場合、95%以上の確率で資産は枯渇しない」という結果が出ました。このStudyは4%ルールの根拠としてしばしば引き合いに出されます。
更に2025年、William Bengen氏は自身の最新の研究をもとに取り崩しルールを「4.7%ルール」にアップデートしました。より新しい(1990年代以降)市場データ、それも米国だけでなく世界的に分散された株式・債券のリターンをもとに、また市場変動に対する退職者の柔軟な対応等を考慮した上で、4.7%程度を安全な取り崩し率として算定したようです。
インターネット上でより詳しい説明を見つけることができますが(4.7%ルールを説明している日本語ウェブサイトは今のところあまりありません)、ここでは4%と4.7%の前提を簡単な比較表にまとめました。
| 4%ルール | 4.7%ルール | |
| 発表年 | 1994年 | 2025年 |
| 研究対象期間 | 1926年–1994年 | 2020年代まで延長 (株式リターンは高く債券リターンが低い期間を含む) |
| 想定ポートフォリオ | 米国大型株・米国債のシンプルなポートフォリオ | 左記に中・小型株、海外株等も加えた分散ポートフォリオ |
| 想定退職年数 | 30年 | 30年 |
| インフレ | インフレ調整考慮 | インフレ調整考慮 |
| 想定取り崩し | 毎年定率4.0%での取り崩しを想定 | 4.7%の取り崩し率はStarting Pointであり、相場次第で取り崩し率の調整を想定 |
そういう訳で、新たな4.7%ルールに基づけば、私の現時点の金融資産で今後の生活費を賄うことができるだろうという計算結果になりました。
なお、このブログでは私の金融資産や支出等の具体的な金額を(まだ今は)公表していませんので、悪しからずご了承ください...。
上記ルールに加えて、以下の要因も考慮しました。
- 上記取り崩しルールは老後に国から受け取る年金を考慮していませんが、私はこれまで社会保障税(Social Security Tax)を納めてきたので、基本67歳以降に年金を受給する権利があります(62歳から繰り上げ受給、70歳まで繰り下げ受給が可能)。国からの年金も考慮すれば、老後により楽観的になれます。
- 今住んでいるアパートのローンが残っているのですが、70歳までに払い終える予定なので、その後の家計はかなり楽になります。また固定金利(固定額)なので、インフレ下で支払い額の負担感は年々下がっていくはずです(途中でアパートを買い換えないと仮定した場合)。
反省点
これまでの道のりを振り返って、「もっとこうすれば良かった」と思う点もいくつかあり、以下参考になれば幸いです。
- 何より、もっと早く「FIRE」という概念を知って資産形成を計画的に進めたかったです。私は結構早めに株式投資を始めたものの、10年くらいは適当にやっていたので(苦笑)、長期・積立・分散を意識して投資を進めたのはFIREを知ってからでした。
- アセットアロケーションを意識して、定期預金(アメリカではCDと言う)等の安全資産への配分を抑え、もっと株式等リスク資産への配分を高めることもできたかなと思います。株式投資を始めて数年は不安定な相場が続き、まだ恐怖心もあったのでしょうがない面もありますが、最低限の生活防衛資金さえあれば、それを超えて多額の現金が必要になるようなことは実際にありませんでした。
- ある時期から高配当株・ETFや債券への投資を多くして利子配当額を増やそうとしましたが、資産形成の段階ではハイテク等のグロース株にもっと比重を置いた方が良かったと思います。そう思うのは過去10年位グロース株のリターンが極めて高かったからで、今後も同じ傾向が続くかは分からず、結果論かもしれませんが。というか、もっとシンプルに米国株インデックスETFに全振りしても良かったかもしれません。
20代や30代の若い方達は、自分がどんな生き方をしたいか考える時間がまだまだあります。自分に自信があってバリバリ働こうという気概があるなら、そんなに早いうちから資産形成に真剣にならなくても良いかもしれません。
一方で、競争心や上昇志向があまりなく、仕事や出世よりも自分の時間を充実させることを優先したい人も多いはずです。仕事のせいで毎朝や月曜日が憂鬱になるようであれば、将来の経済的自由を見据えて早くから投資を始めることは合理的な選択だと思いますし、歳をとってから経済的余裕だけでなく精神的な余裕も持つことができると思います。
これからの生活は?
今の気持ちについて聞かれたら、「嬉しくて仕方ない!」とまでは言いませんが、少なくとも会社員時代のプレッシャーからは解放され、ストレスフリーな毎日を送っていると言えます。
物価の高いニューヨークで暮らしていることもあり、悠々自適には程遠く、退職後はできるだけ節約を心掛けていますが、このブログで主に投稿しているようなミュージカル観劇等の娯楽にはできるだけ予算を割きたいとも思っています。
FIREにはいくつかの種類があるのですが(詳しくはこちらを参照)、もし私が今完全にリタイアする場合は「Lean FIRE」というカテゴリーに当てはまりそうです。Lean FIRE(痩せたFIRE)とは、比較的小さな資産ポートフォリオの中で贅沢をせずに節制した生活を送る状態を指します。現段階ではどうしてもカツカツのFIRE生活になってしまうと思います。
とは言え、これで仕事から完全にリタイアしようと考えている訳ではなく、一休みしたら、自分の好きなことや興味があることをどうにか仕事に繋げられないか、模索していきたいです。
どうやって自分の好きなように生きていけるか、もしくは嫌なことをせずに生きていけるか、この歳にして人生の新たなスタート地点に立ったような気持ちです。