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オペラ

  • June 10, 2024

オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」鑑賞

メトロポリタン(メット)・オペラで「オルフェオとエウリディーチェ」というオペラを観劇しました。一般的にはそんなに知られていないオペラだと思いますが、私も観るまで名前すら知りませんでした。18世紀にドイツで生まれ、オーストリアで活躍したグルックという作曲家によるオペラの代表作だということです。 このオペラで特筆すべきことのひとつは、カウンターテナー(女性の声域を持つ男性歌手)が主人公のオルフェオ役(男)を演じる点です。本作が初演されたときは、カストラートと呼ばれる去勢された男性歌手がオルフェオ役をやったそうです。以前「カストラート」という映画を観た方もいるかもしれませんが、近代以前(17〜18世紀頃)のヨーロッパではカストラートはかなり人気を博したようです。もちろん現在カストラートは人道的観点から廃止されています。 最近私がYoutubeを見ていると、このオペラのコマーシャルが何度も流れてきたこともあり...興味が沸いたので観てみることにしました。 なお、私が観に行った6月8日の公演は、メット・オペラの2023〜2024年シーズンの最終公演でした。 1. 基本情報 休憩なしで2時間弱の比較的短いオペラです。 2. あらすじ 登場人物は、オルフィオ、エウリディーチェ、愛の神の3人。とってもシンプルなお話です。 オルフィオは、妻エウリディーチェの死を墓前で嘆き悲しみ、何とか生き返らせたいと祈る。愛の神が現れ、彼が妻を連れ戻すために冥界に行くことを許すが、地上に戻るまで決して彼女を見てはならない、という試練を与える。 冥界に入ったオルフィオは死霊たちに取り囲まれるが、竪琴と歌で彼らを静める。遂にエウリディーチェを発見すると、その姿を見ないように手を取って地上へ向かう。 エウリディーチェは夫が自分を見ようとしないことに不安を抱き、ついて行くことを止める。オルフェオは耐え切れずに振り向いて妻を見てしまい、その瞬間エウリディーチェは絶命する。オルフェオが絶望し自ら命を絶とうとすると、再び愛の神が現れ、「真の愛が示された」としてエウリディーチェを生き返らせる。二人は抱き合って喜び、神に感謝する。 3. 感想など 音楽 グルックがこのオペラを作曲・初演したのは1762年とのことで、今も頻繁に上演される人気オペラ(モーツアルト、ワーグナー、プッチーニ、ヴェルディなど)と比べると少し古いですが、それが私には逆に新鮮に感じられました。 時代的にはバロック時代の後期に属していて、楽器にチェンバロが使われていたり、確かにバロックっぽい響きも感じました。一方で、以降のモーツアルトの音楽に見られるような古典派を彷彿とさせる部分もありました。 カウンターテナーというと、私にはアニメ「もののけ姫」の主題歌を歌った米良良一さんがまず浮かびますが、女声の音域でありながら男性の声質という、何とも言えぬ不思議な(もののけ的な、笑)印象を持っていました。 今回実際に聞いてみると、オルフィオ役を演じたカウンターテナーのAnthony […]

  • February 11, 2024

オペラ「カルメン」鑑賞

2024年のオペラ鑑賞第一弾として、メトロポリタン・オペラ(メット)による「カルメン」を観に行きました。 オペラに詳しくない人でも、オペラ「カルメン」の前奏曲や有名な歌をきっとどこかで聞いたことがあるはずだと思います。また、「カルメン」という女性の名前を聞けば、真っ赤なドレスを着た情熱的な女性のイメージを連想するのではないかと思います。 今シーズンからメットの「カルメン」は新しいプロダクションになるとのことで、どんな感じか楽しみにしていました。が、かなり現代風に演出されることが分かり、車に乗って挑発的に睨むカルメンの宣伝写真を見て、少し心配になりました... 1. 基本情報 2. あらすじ オリジナルの「カルメン」の舞台は19世紀のスペイン、セビリア。 第1幕 タバコ工場で働く女工のカルメンは男達に人気がある。衛兵のドン・ホセだけは彼女に興味を示さないが、カルメンは彼の気を引こうとする。カルメンは他の女工と喧嘩騒ぎを起こして捕えられるが、衛兵ホセを誘惑して手縄をゆるめさせ、逃げ去る。 第2幕  カルメンが酒場で仲間と歌い踊っているところに、闘牛士のエスカミーリョが現れ、カルメンに一目惚れする。カルメンを逃がした罪で牢に入っていたホセは釈放され、カルメンに会いに酒場へ行く。カルメンはホセにジプシーの密輸団の仲間になるように誘う。ホセは軍を脱走し、ジプシー達の仲間に入る。 第3幕 密輸団にいるホセのもとに婚約者のミカエラが訪ねてきて、故郷のホセの母が重病だと伝える。ホセはカルメンのことを思いつつも、母のもとへ帰る。移り気なカルメンの心は彼から離れ、再会したエスカミーリョに移る。 第4幕 闘牛の当日、闘牛場前の広場でカルメンとエスカミーリョは愛の言葉を交わす。その後、カルメンの前にホセが現れて復縁を迫る。カルメンは彼を相手にせず、以前もらった指輪を投げ捨てる。ホセは激昂してカルメンを刺し殺す。 ただし、今回のメットの演出では、舞台は現在のアメリカ南部。カルメンと仲間の密輸団は大きなトラックで旅していて、エスカミーリョは闘牛士でなくロデオのスター!になっていました。あらすじ自体は概ね同じでした。 3. 感想 珠玉の音楽 […]

  • January 14, 2024

オペラ「魔笛(The Magic Flute)」鑑賞

メトロポリタン・オペラ(メット)によるモーツァルトの「魔笛」を観に行きました。私にとって2023年最後のオペラ観劇でした。 メットでは、毎年12月末(クリスマス〜大晦日)に全編英語で2時間弱に短縮された「魔笛」の公演をやっています。子供達も楽しめるようファミリー向けに改編されたものです。メットと同じリンカーン・センターの敷地内にあるDavid H. Koch劇場では、年末恒例のバレエ「くるみ割り人形」の公演をやっており、年の瀬のリンカーン・センターは家族連れの観客で溢れ返っています。 「魔笛」は、モーツァルトが人生の最後に完成させたオペラであり、よく知られた歌も複数あって、人気のオペラのひとつとなっています。 1. 基本情報 この短縮版は休憩なしのノンストップですので、注意が必要です! 2. あらすじ 舞台は古代エジプトのとある国。主な登場人物は6人です。 ①王子タミーノ ②タミーノにお供するパパゲーノ ③タミーノと結ばれる娘パミーナ ④パパゲーノと結ばれるパパゲーナ ⑤パミーナの母、夜の女王 ⑥夜の女王と敵対するザラストロ 以下は簡単なあらすじです。(上記のとおり、この短縮版公演は2幕に別れていません。) 第1幕 王子タミーノは大蛇に襲われるが、夜の女王の侍女3人に助けられる。通りかかった鳥刺しのパパゲーノは、助けたのは自分だと嘘を付くが、侍女達によって口に鍵を掛けられる。 […]

  • December 28, 2022

オペラ「 リゴレット」鑑賞

オペラは毎年秋(9月)に新しいシーズンが始まりますが、私の今シーズン最初のオペラとして「リゴレット」を観に行きました。「リゴレット」はイタリアを代表するオペラ作曲家ヴェルディによる作品で、「椿姫」「アイーダ」などと並ぶ彼の代表作と言われています。 とは言え、オペラにある程度詳しい人ならともかく、オペラをよく知らない人にとって「リゴレット」という名前はあまり耳馴染みがないのでは?と思います。私自身、ニューヨークに来てオペラを観るようになるまで聞いたことがありませんでした。 ただ、この「リゴレット」には非常に有名な「女は気まぐれ(女心の歌)」という歌があります。昔からコマーシャル等で頻繁に使われてきたので、聞いたことのない人はいないのではないでしょうか。(ちなみに、私が初めてこの曲を聞いたのは、マットか何かのCMでした...) 知っている曲がひとつあるだけでも、オペラ鑑賞への期待は膨らみます。 1. 基本情報 2. あらすじ 舞台は 16世紀、イタリアのマントヴァ。主な登場人物は、マントヴァ公爵、公爵に仕える道化師リゴレット、リゴレットの娘ジルダ、そして殺し屋スパラフチーレ。以下、簡略化したあらすじです。 第1幕 女好きのマントヴァ公爵は、女性を次から次に弄ぶが、最近見かける若い娘のことが気になっている。娘の後をつけた公爵は、それが自分に仕えるリゴレットの娘ジルダだと知る。リゴレットはジルダを愛するあまり、外出もさせないようにしていた。が、リゴレットの留守中に公爵がジルダの前に現れ、うぶなジルダを口説いてとりこにする。 一方、公爵の廷臣達はジルダをリゴレットの愛人と勘違いしており、ジルダを公爵に献呈しようと計画し、リゴレット宅に集結してジルダを誘拐してしまう。 第2幕 廷臣達がジルダを公爵の寝室に連れてくると、公爵は喜んで寝室へ入る。そこへリゴレットも登場し、「娘を返せ!」と探し回る。廷臣達は、ジルダがリゴレットの愛人ではなく娘だったことに驚く。 寝室から逃げ出したジルダは、リゴレットと再会してこれまでの経緯をすべて話すが、公爵への想いが変わらないことも伝える。リゴレットは公爵への復讐を誓う。 第3幕 殺し屋スパラフチーレの宿屋。そこで公爵は、女はみな気まぐれと歌いながら、スパラフチーレの妹マッダレーナを口説く。宿屋の外でそれを聞いたジルダは絶望する。リゴレットはジルダを慰め、男装してヴェローナへ向かうように言う。 リゴレットはスパラフチーレに公爵の殺害を依頼する。ところが、まだ公爵に惚れているジルダは自分が身代わりに殺されることを決心し、男装のまま宿屋を訪れる。 リゴレットはスパラフチーレから公爵の死体が入った袋を受け取る。袋を川へ捨てようとした時、遠くから公爵が「女は気まぐれ」と歌う声が聞こえ、驚いたリゴレットが袋を開けると、中には瀕死のジルダがいる。ジルダは、愛する人の身代わりなったことを父に告げ、息絶える。 […]

  • January 30, 2022

オペラ「トスカ」鑑賞

2022年最初の舞台観劇として、メトロポリタン・オペラへ「トスカ」を観に行きました。 Wikipediaでは「見せ場の多いオペラ」と紹介されていますが、確かにストーリーの展開も音楽もとてもドラマチックです。 トスカの役は、あの伝説的ソプラノ歌手マリア・カラスの十八番だったと言われています。意外なことに、マリア・カラスがオペラの舞台で実際に歌っている映像はほとんど残っていないのですが(もちろん録音はたくさん残っています)、唯一残っているのがトスカの第2幕の映像だそうです。 1. 基本情報 2. あらすじ 舞台はナポレオン戦争時の1800年、ローマ。主な登場人物は、女性歌手のトスカ、画家のカヴァラドッシ、ローマ市警視総監のスカルピアの3人で、三角関係が繰り広げられます。 第1幕 脱獄した政治犯のアンジェロッティが教会に逃げ込む。そこで絵を描いていたカヴァラドッシはアンジェロッティに気付き、逃亡を手助けしようとする。 カヴァラドッシの恋人トスカが教会に現れる(アンジェロッティは隠れる)。嫉妬深いトスカは他の女の影を怪しむが、その夜に2人で会う約束をして去る。 アンジェロッティの脱獄を知らせる大砲が鳴り、彼とカヴァラドッシは教会を急いで出る。アンジェロッティを追う警視総監のスカルピアが教会にやって来る。(スカルピアはトスカを手に入れたいと願っている。) 第2幕 宮殿のスカルピアの部屋。捕まったカヴァラドッシが連れて来られ、アンジェロッティの居場所を白状するよう拷問される。 そこにトスカも呼ばれ、拷問の苦痛にうめく恋人の声を聞く。トスカはスカルピアにカヴァラドッシの助命を嘆願するが、その代償としてスカルピアから体を要求される。トスカは絶望しして神に祈る。(「歌に生き、愛に生き」を歌う。) トスカは要求を受け入れ、スカルピアは部下にカヴァラドッシを見せかけの銃殺刑(空砲で殺さない)に処するよう命じる。 そして、迫ってくるスカルピアをトスカはナイフで刺し殺す。 第3幕 サンタンジェロ城の処刑場。処刑を待つカヴァラドッシはトスカを思い絶望する。(「星は光りぬ」を歌う。)そこにトスカが訪ねて来て、見せかけの処刑が行われることを告げ、撃たれたら倒れるように頼む。 やがて、カヴァラドッシが処刑場に連行され、兵士達の発砲を受けて倒れる。トスカはカヴァラドッシの側に駆け寄るが、彼は実際に銃殺されて死んでいた。トスカは泣き叫ぶ。 […]

  • November 12, 2021

「ラ・ボエーム」in メトロポリタン・オペラ

ニューヨーク市では、ブロードウェイミュージカル等のエンターテインメントが9月以降に続々と再開しています。 私も、コロナ禍になって以降初めてメトロポリタン・オペラ(メット)へ行きました。観たのはプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」。定番の人気作なので、オペラについて詳しくない人でも名前くらいは聞いたことあるのではないでしょうか。 オペラなど観たことのなかった若い頃の私にとって、「ラ・ボエーム」と言えば、大好きだった中森明菜の大ヒットシングル「DESIRE」のB面曲のタイトル!(当初はA面になる予定だったとか。)また、「ボエーム」とはボヘミアン(自由奔放な生き方をする人達のこと)のフランス語らしく、葛城ユキが歌っていた「ボヘミアン」という曲も思い出します。が、オペラ「ラ・ボエーム」はそういった80年代のヒット曲とは全く違った趣で(当たり前)、美しくも悲しいラブストーリーがロマンチックな音楽に乗せて綴られます。 数年前に最初に観た「ラ・ボエーム」が素晴らしく印象に残っているので、メットが再開したら絶対また観たいと思っていました。 なお、メットへ入場する際はまずワクチン接種証明のアプリ画面(もしくは接種証明カード)とIDを係員に提示し、入場してからチケットを別の係員に見せる(バーコードを読み取る)という段取りでした。ニューヨークでは観劇をする際にワクチン接種証明が必須になっています。また、劇場内では常時マスクを着用する必要があります。 1. 基本情報 作品名:La Bohème(ラ・ボエーム)作曲:Giacomo Puccini(ジャコモ・プッチーニ)演出:Franco Zeffirelli (フランコ・ゼッフィレッリ) 観劇日時:2021年11月9日 午後7:00 〜 10:00(4幕、30分休憩2回含む) 劇場:Metropolitan Opera (30 Lincoln […]

  • September 29, 2019

オペラ「マノン」感想

オペラが好きと言うと、「高尚な趣味をお持ちですね〜」などと言われるかもしれません。ニューヨークに旅行に来る人で、一応ミュージカルに行ってみるという人は多いですが、オペラに行く人はよっぽど好きでない限りあまりいないかもしれませんね。 でも、ニューヨーク在住の私の友人にはオペラが好きだという人が結構多いのです。オペラでは、最高峰の歌手達の生声(マイクなし)の歌唱、フルオーケストラの演奏はもちろん、豪華な舞台セットや衣装、大勢のエキストラ、と見所がいっぱい。ミュージカル以上に、日常から離れた特別な空間を感じさせてくれます。 ニューヨークのメトロポリタン・オペラハウス(メットと呼ぶ)は、アッパーウェストサイドのリンカーン・センターと呼ばれる総合芸術エリアの一角にあります。とても洗練された雰囲気のある、個人的に大好きなエリアです。ニューヨーク交響楽団の本拠地David Geffin Hallもリンカーンセンター内にあります。 有名なオペラはほとんどがイタリア語・ドイツ語・フランス語で、話のすじをあらかじめ知っておく方がいいのですが、メット・オペラでは各客席の前に多言語での字幕を表示する小さな画面があるので(日本語はなし)、英語が読める限り歌っている内容はだいたい分かります。 オペラのシーズンは、毎年9月中旬〜5月頭くらいまで。私はだいたい年に3、4回観に行くことにしています。今シーズン最初のオペラとして「マノン」を見に行ってきました。 1. 基礎情報 作品名:Manon(マノン) 作曲:Jules Emile Frédéric Massenet(ジュール・マスネ) 初演:1884年 観劇日時:2019年9月28日12:30〜4:30(30分休憩2回含む計4時間) 劇場:Metropolitan Opera (30 Lincoln […]