資産形成 〜 2023年と2024年上期振り返り


2024年も7月に入り、早いもので半年が過ぎました...。私は毎年定期的に自身の資産形成状況を確認することにしています。このブログでは、今更ながら2023年の市場動向、加えて2024年上期までの動向、この期間の自身の資産形成の進捗について振り返りたいと思います。


株式投資

2022年の米国株式市場は軟調な展開でしたが(昨年のブログ「資産形成 〜 2022年振り返りと2023年途中経過」にまとめています)、2023年の株式市場は一転してかなり好調でした。2024年に入っても堅調に推移しています。

以下のグラフは、2023年〜2024年上期の米国主要株式インデックス指数の変動を示しています。下から水色の線がDow Jones、青の線がS&P 500、紫の線がNasdaqです。

(Source: Yahoo! Finance

2023年に入って株式市場が好調になった主な要因は、インフレ抑制のために2022年から連邦準備銀行(FRB)が行ってきた政策金利の利上げが一段落し、2023年後半には利下げに転じることが期待されていたからです。

実際には、FRBは2023年前半に計4回の利上げを行い、政策金利目標を5.25~5.50%まで引き上げましたが、米国のインフレは根強くて期待されたように下がらず、経済指標では米国経済の底堅さが示唆されたこともあり、結局2023年内に利下げは行われませんでした。

そのため、2023年夏〜秋にかけて、FRBによる金融引き締め(高金利の据え置き)が長期化するとの観測から米国長期金利が再び上昇し、株式市場は 一旦調整局面に入りました。しかし、11月に入るとFRBの利上げが終了したとの見方が強まり、長期金利が一転して低下したため、米国株式は上昇する展開になりました。

2024年に入り、利下げの見通しが中々立たず金利の高い状況が続いていますが、米国株式市場は堅調に推移しています。このブログを書いている時点で、2024年後半に利下げが1回だけ行われるというのが大方の予想のようです。


以下の表では、3つの主要株式インデックスの2022年、2023年、2024年上期の騰落率を示しています。

2022年2023年2024年上期
Dow Jones– 8.8%13.7% 6.7%
S&P 500-19.4%24.4%14.5%
Nasdaq-33.1%43.4%18.1%

これを見ると、2022年の株式指数の下落分を2023年の上昇分が補い、2024年前半も上昇基調が続いていることが分かります。また、主にハイテク企業株で構成されるNasdaq指数は金利の影響を受けやすいため期間中の騰落の振れ幅が激しい一方で、実績のある伝統的企業で構成されるDow Jones指数は比較的落ち着いた動きになっています。落ち着いた動きとは言っても、過去の米国株式市場の年平均リターン(過去の期間にもよるが8%程度)と比較するとかなり高い上昇率なのですが。

好調な米国株式市場と一口に言っても、それを牽引しているのはかなり限られた数の銘柄です。特に、生成AI関連の銘柄や、AI向け半導体を提供するエヌビディア株が市場の上昇トレンドを牽引している状況です。


2024年の後半は利下げのタイミングが大きな鍵になると思いますが、11月には大統領選もありますし、更に諸外国の戦争や政情不安が続く中、株式市場が各要因にどのような反応をするか、米国株に投資する者として気になるところです。


債券投資

債券の基本として、市場金利が上がれば債券価格が下がり、逆に金利が下がれば債券価格が上がるのですが、上記のとおり2023年〜2024年上期において利下げが行われなかったことから、市場金利は高い水準で推移し、債券市場は引き続き軟調でした。

一般的に、株式と債券は逆相関の関係にある(景気が好調で株価が上がると債券価格が下がり、逆に景気後退で株価が下がると債券価格が上がる)というのが前提なのですが、2022年以降は市場金利の推移を受けて株価も債券価格も同じように上下するという傾向になりました。ただ、2024年には市場金利が高止まりする(債券価格が上がらない)中でも株価は順調に上がっており、相関関係に少しずつ変化が出てきているようにも見えます。

株式市場と同様、債券市場においてもFRBによる利下げのタイミングが今後の鍵になります。年内にも利下げがあることを想定して債券への投資を増やしていくことで、現在の高い金利(米国債金利は期間にもよるが4%〜5%)を享受しつつ、将来の債券価格の上昇にも期待することができると思います。


仮想通貨投資

株式市場と同様、仮想通貨市場も2023年から好調に転じました。2023 年において、最大の仮想通貨であるビットコインは約160%、2番目に大きなイーサリアムは約90%という驚異的な価格上昇(米ドルベース)を記録しました。もっとも、2022年の暴落からの反発という側面もあるのですが。

そして、2024年1月10日には米国証券取引委員会(SEC)がビットコインを直接保有するETF(上場投資信託)をアメリカで初めて承認しました。ビットコイン現物ETFはかなり以前から上場申請されていたものの、SECは仮想通貨取引に対して厳しい姿勢を取っており、中々承認しようとしませんでした。ETFがついに承認されたことで投資家がビットコインに投資しやすくなり、実際にETFに多くの資金が流入してビットコイン価格は上昇しました。

さらに、2024年5月23日にはSECがイーサリアム現物のETFを承認しました。イーサリアム現物ETFの承認にはかなり時間がかかると思われていたので、突然のニュースは驚きを持って受け止められました。実際にはまだ申請書類の修正手続きが残っているようですが、近いうち、早ければ7月中にもETFの取引が開始されると見られているようです。

このような状況で、2024年上期にはビットコイン、イーサリアム共に約50%も上昇しています。このブログを書いている時点で仮想通貨市場は一旦調整局面に入ったようですが、ビットコインとイーサリアムの相次ぐETF承認に加え、利下げによるリスクマネーの流入期待も相まって、仮想通貨の将来に対する楽観的な予測も増えてきました。

為替市場

為替相場では、アメリカの高金利と日本の低金利の間の金利差が広がったことで円安ドル高が進行しました。

2023年年始は1ドル131円だったのが、11月には150円を超える水準にまで円安が進行しました。さらに2024年4月末には一時的に160円を超え、この時点で日銀による為替介入が行われたようです。それでも介入の効果は一時的で、円安ドル高のトレンドが簡単に変わる気配はなく、6月末時点では161円になっています。

米ドルのみならず、ユーロや英ポンド等のほとんどの主要通貨に対して円安が進行していて、日本円の弱さが際立っています。この円安効果を反映して、海外観光客が日本に押し寄せていること、日本で物価上昇が続いていることは皆さんもご存知のとおりと思います。

上記のとおりアメリカで利下げが始まり、日本では利上げが行われれば、金利差が縮小して為替は円高ドル安に転じるだろうという見方は2023年からありましたが、まだそのような段階には至っていないようです。

日本の新NISA

さて、日本に居住していない私には関係ない話なのですが、2024年1月から「新NISA」制度が始まり、ニュースなどでもかなり話題になっていますね。

基本的なおさらいとして、「NISA」とは少額投資非課税制度のことで、「Nippon Individual Savings Account」の略だそうです。国民の「貯蓄から投資へ」の流れを促すことを意図して2014年に始まった制度で、NISA口座で投資した金融商品から得られる売却益や配当が非課税になるというメリットがあります。

2024年からの新NISAでは、旧NISAと比べて年間投資上限額が増加し(年間で計360万円)、生涯の非課税限度額も増加し(計1,800万円)、更に非課税保有期間も無期限になるなど、投資家にとってのメリットが拡大しました。


多くの投資系YouTuberが新NISAに歓喜して利用を勧めているのを見ましたが、一部の知識人からはNISA制度に対する批判や懸念も上がっているようです。

政府が日本人の老後を年金で支えることができなくなってしまったので、各自が自己責任の投資によって老後資金を準備してくれと言っているようなものだ、という政府への批判があります。確かにそういう批判ももっともだと理解しつつ、国に頼れないなら文句を言ってもしょうがないので、NISAでも利用して自分達でやれることをするしかないのでしょう。

また、投資の知識や経験のない人にまで安易に制度利用を進めていることへの懸念もあります。投資リスクに対する耐性は人それぞれなので、私もNISAで投資を始めることが全ての人にとって良いことだとは思いません。特に、NISA口座では投資利益に税金がかならないメリットがある反面、NISA口座で出た損失を他口座の利益と損益通算したり将来に繰り越したりして税金を減らすことができないデメリットもあることを理解しておく必要があります。(一般の課税口座であれば、損失を他の利益と通算したり将来に繰り越したりして課税所得を減らすことが可能です。)

とは言え、アメリカではそもそも家計における投資の割合が高いからか、NISAのような制度が存在しないので、私としてはNISAは羨ましい限りです。もし私にも利用可能ならきっと利用すると思います。今年の株式市場はこれまでのところ好調ですから、新NISAを始めた人は大抵が良い思いをしていることでしょう。


自分の家計と資産形成

アメリカ・ニューヨークに住んでいるとインフレが続いていることを実感しますが、一部商品では値下げやセールが積極的に行われていたり、インフレ沈静化の兆しか?と感じることもあります。

なんだかんだで出費も年々増えていく中、なるべく自炊をしたり、通信費を安いプランで変えたりなど(しょぼい内容ですが笑)、できる範囲で支出減の努力をして貯蓄率(=支出/可処分所得)の維持に努めています。

そして、貯めたお金を投資に回し、これまでと同じように長期分散の観点からコツコツと投資を続けています。

  • 株式は、米国株インデックスETF(VTI)や高配当・増配株ETF(VYM、VIG等)を中心に定期的に購入しています。2023年〜2024年上期は好調な株式市場の恩恵に預かりました。
  • 債券は、主に債券ETF(BND、LQD)を定期的に購入していますが、今の高金利を享受するために中長期の米国国債に直接投資することも始めました。今の私のポートフォリオは株式の割合がかなり高いのですが(株式9:債券1くらい)、徐々に債券の割合を増やして数年中に8:2くらいの割合に持っていきたいなと考えています。
  • 仮想通貨は、最近の驚異的な上昇の中で買い増していく勇気がなく、むしろ少し売ったりしています。今後も上昇基調が続くことを期待して、調整局面では追加投資を検討したいです。
  • その他、金・銀といったコモディティのETFにも若干投資していますが、私にとってはあまり面白味を感じないので、今のところ追加投資は考えていません。


FIREへの道

2022年は投資運用成績が悪く、私のFIRE(Financial Independence, Retire Early)が遠のいたようで悲観的になりましたが、2023年からは上記のとおり市場が好調なので、私の計算ではあと2、3年でFI(Financial Independence)達成の目処がつくかも?という段階に来ています。

もちろん、市場の歴史を踏まえると今のような上昇トレンドが長く続くとは考えられませんが、将来を見通すことも不可能ですので、私としてはこれからもブレずに長期積立投資を続けていくだけだと思っています。


ただ、もしFIの金額的な目標を達成したとしても、RE(Retire Early)という点で自分の残りの人生をどう生きたいかという具体的な目標やイメージがまだありません。これは資産形成を行うこと以上に重要かつ大きな問題ですが、何年も考え続けながら未だに答えが見つかりません...。

先日、セミリタイアを達成した人が「それまでにお金をいくら貯めたかは、リタイアを決断する上でほとんど影響しなかった」と言っていたのが印象に残りました。FIREを目指して資産を数億に増やしてもいざとなると会社を辞められない人もいる一方で、1千万円とかそれ以下の資産で(セミ)リタイアしている人も多いようです。各人の置かれた状況、性格、リスク許容度など様々な要素がREの決断に影響することは想像できます。


FIとREは別の問題なのだろうと思うこの頃です。