アメリカ大統領選挙の一週間

11月5日(木)〜6日(金)開票続く

5日になっても、前日に続き各州の開票がゆっくりと進みました。郵便投票の開票に時間がかかるのは、各有権者の署名確認を複数の立会人が行った後で、その投票用紙を機械にかけていくかららしいです。

未決定の各州の状況は、ペンシルベニア州とジョージア州ではトランプにバイデンがどんどん迫っていくという前日からの展開が続いていて、一方アリゾナ州ではバイデンとの票差をトランプが縮めていくという、やはり同じ展開が続いていました。

ネバタ州でも開票が再開したようで、ここではバイデンがリードを更に広げていました。

5日の時点で、もしバイデンがペンシルベニア州を取ればバイデンの当確となり、ペンシルベニアを取れなくても アリゾナ州・ジョージア州・ネバタ州のうち2州を取れば、やはりバイデンの当確となる状況になりました。トランプにとってかなり形勢不利になってきました。

5日夕方にトランプは会見を開いて、「有効な票を数えれば我々の圧勝だが、不正な票のために選挙が盗まれている」「不正を暴くために訴訟を準備している」と話しました。しかし、不正の根拠について何も言及せず、ただ原稿を読んで記者の質問にも答えず立ち去り、元気がないように見えました。

翌6日には、 ついにジョージア州とペンシルベニア州でバイデンの票数がトランプを上回り、徐々にその差を広げていきました。やはり、郵便投票分はバイデンの票がトランプの票よりも圧倒的に多かったようです。ただし、ジョージア州では2人の得票差が非常に僅差になりそうなことから(この時点で0.1%)、当局は票を再集計する方針を発表しました。

アリゾナ州では、引き続きトランプがバイデンを追い上げていましたが、残りの未開票数を考えるとトランプが逆転するのはかなり難しいようで、実際にいくつかのメディアはバイデンの勝利確実としていました。

ネバダ州の開票は非常にゆっくりでしたが、こちらはバイデンがリードを更に広げる展開でした。

結局6日も、いずれの州でもバイデンの当確は出ませんでした。当日夜、バイデンが地元のデラウェア州で短い演説を行い、メディアからの大統領当確が出ていない中で勝利宣言こそしませんでしたが、「勝利を確信している」と話しました。


11月7日(土)バイデン 当確

翌7日朝、ペンシルべニア州の最新の開票状況で、バイデンとトランプの得票差がさらに広がったことが分かり、CNNはペンシルべニア州でのバイデンの勝利を確実としました。バイデンがペンシルベニアの選挙人20人を獲得したことで、選挙人合計が過半数の270を超え、冒頭に書いたとおり、午前11時半頃にCNNがバイデン候補の当確を報じました。

伝えられている通り、トランプ側は投開票で行われた不正に関して訴訟を起こす準備をしているとのことで、このまま無事に政権移譲が行われるかどうか分かりません。もちろん、不正の疑いがあれば訴訟で争う権利があるので、きちんと手続きを踏んでやればいいと思います。ただ、確固たる証拠もないようで、トランプが周囲から負けを認めるよう説得されているというニュースも入ってきました。

トランプ陣営は、$60 Millionとも言われる訴訟の費用を賄うために支持者に寄付を募っています。寄付募集の注記には、「寄付の半分が選挙活動での借金の返済に使われる...」とあり、かなり資金難に陥っているようでもあります。トランプ支持者で、バイデン陣営の不正を声高に叫んでいる人達が今できることは、とにかくトランプにたくさん寄付して、金銭面で支援してあげることではないでしょうか。



7日の夜8時半頃から、次期大統領となるバイデンは、次期副大統領のカマラ・ハリスと共に、地元のデラウェア州で勝利宣言を行いました。

会場に最初に登場したハリスは、女性として、また黒人・アジア系として初のアメリカの副大統領になります。喜びいっぱいの笑顔で「私は初めての女性の福大統領になるが、最後ではない。(While I may be the first woman in this office, I will not be the last.)」と語りかけました。

そして、ハリスに紹介されてバイデンが登場しました。「分断ではなく団結を目指す大統領になる。(I pledge to be a President who seeks not to divide, but to unify.)」「自分に投票した人だけでなく、投票しなかった人のためにも働く。(I will work as hard for those who didn’t vote for me, as I will for those who did.)」というメッセージが印象に残りました。

これからも、一向に収まらないコロナ感染拡大への対策など問題は山積みで、大変な船出になるでしょうが、今後のアメリカへの希望を感じさせてくれる演説でした。


思ったこと

さて、選挙一色の一週間を終え、選挙権のないアメリカ住民でありながら、勝手に思うところがありました。

  • 選挙制度...形式的に、有権者は大統領候補への投票を通じて州毎に人口比で割り振られた大統領選挙人( electoral college)を選ぶ、一票でも多く獲得した大統領候補者がその州の選挙人を総取りする(Winner-take-all)という、この不思議な制度。最初から結果が明白なニューヨーク州やカリフォルニア州等はほとんど注目されず、いつも激戦になる州(swing state)の投票結果ばかりが重要になります。この制度のせいで、2016年の前回選挙のときのように得票総数(popular vote)が多かったヒラリー・クリントンではなくトランプが当選するようなことも起こり得ます。有権者の一票の重みが州によって全然違ってしまいます。とは言え、アメリカ憲法に規定されている建国以来の制度。変えるのは非常に難しそうです。

  • 投票方法...今回はコロナの影響もあって、多くの州で郵便投票の利用が拡大され、その是非が問題になりました。郵便投票自体は制限付きで前からあったようですが、今回は制限がかなり緩和されました。コロナ感染に敏感な民主党支持者の方が郵便投票を利用する可能性が高かったこともあり、共和党は選挙前から郵便投票で不正が起こることを問題視していました。開票後も、いくつかの州で郵便投票の開票作業を止めるよう訴訟を起こしています。コロナ禍という特殊な状況で取られた措置ですが、州によって郵便投票の到着期限もまちまちだったりしています。選挙前に郵便投票の是非や取り扱いをきちんと議論し、後で揉めないように出来なかったのかと思います。次回選挙に向けての宿題でしょうか。

  • 開票のやり方...その郵便投票の開票に時間がかかり、勝者の確定が通常より遅れました。フロリダ州等では郵便投票の開票を3日の投票日前から始めていたので、全体の開票がスムーズに進んだ一方、ペンシルベニア州等では3日の投票が締め切られた後でしか開票作業を始められないことになっていたので、最後に残った郵便投票の開票にかなり時間がかかりました。郵便投票の準備が突貫工事で行われた事情もあるでしょうし、開票所で朝から深夜まで開票作業していた人達には頭が下がる思いです。が、重要な選挙の開票がタイムリーに伝えられることも大事ですし、開票のやり方について各州で足並みを揃えることが出来なかったのかと思います。

  • メディアの事前予想...バイデン優勢という概ねの予想は最終的には当たりましたが、その差は予想よりもずっと小さい接戦でした。ラストベルト3州では予測以上に僅差でのバイデンの辛勝となり、バイデンがかなり健闘するか勝つかも?と言われていたフロリダ州やオハイオ州ではトランプが早々に勝利を確実にしました。やっぱり、隠れトランプがかなり存在するのか?その他にメディアの調査が掴めなかった要因があるのか?ヒスパニック系にバイデンの支持が思ったほど広がらなかったという見方もあります。予測と結果の差異を、メディアにはよく分析してもらいたいです。
  • 分断と団結...バイデン勝利とは言え、バイデンの得票約7,500万票に対し、トランプも7,100万の得票がありました(米国時間11月8日時点)。どちらも史上最高の票数だそうです。アメリカ「分断」というのはオバマ大統領の時代から言われていました。でも、その分断を利用して大統領になり、分断を更に深めたのはトランプ大統領だと私は思っています。だからこそ、バイデンの「分断でなく、団結を目指す」という言葉が今大事なのでしょうし、それが今後の政策でどのように反映されるのか、見守っていきたいです。私も、自分や自分の周りと違う考えを持つ人達のことをもっと知る必要があるな〜、と感じました。


長い一週間でした...