オペラ「マノン」感想

オペラが好きと言うと、「高尚な趣味をお持ちですね〜」などと言われるかもしれません。ニューヨークに旅行に来る人で、一応ミュージカルに行ってみるという人は多いですが、オペラに行く人はよっぽど好きでない限りあまりいないかもしれませんね。

でも、ニューヨーク在住の私の友人にはオペラが好きだという人が結構多いのです。オペラでは、最高峰の歌手達の生声(マイクなし)の歌唱、フルオーケストラの演奏はもちろん、豪華な舞台セットや衣装、大勢のエキストラ、と見所がいっぱい。ミュージカル以上に、日常から離れた特別な空間を感じさせてくれます。

ニューヨークのメトロポリタン・オペラハウス(メットと呼ぶ)は、アッパーウェストサイドのリンカーン・センターと呼ばれる総合芸術エリアの一角にあります。とても洗練された雰囲気のある、個人的に大好きなエリアです。ニューヨーク交響楽団の本拠地David Geffin Hallもリンカーンセンター内にあります。

メトロポリタン・オペラハウス

有名なオペラはほとんどがイタリア語・ドイツ語・フランス語で、話のすじをあらかじめ知っておく方がいいのですが、メット・オペラでは各客席の前に多言語での字幕を表示する小さな画面があるので(日本語はなし)、英語が読める限り歌っている内容はだいたい分かります。

オペラのシーズンは、毎年9月中旬〜5月頭くらいまで。私はだいたい年に3、4回観に行くことにしています。今シーズン最初のオペラとして「マノン」を見に行ってきました。

1. 基礎情報

作品名:Manon(マノン)
作曲:Jules Emile Frédéric Massenet(ジュール・マスネ)
初演:1884年

観劇日時:2019年9月28日12:30〜4:30(30分休憩2回含む計4時間)

劇場:Metropolitan Opera (30 Lincoln Center Plaza)

「マノン」と言えば、岩崎良美さんの「あなた色のマノン」を思い浮かべるくらいで(年がバレる)...そんなオペラがあること自体知らず、作曲者のマスネも聞いたことありませんでした。

プッチーニも同じ題材で「マノン・レスコー」というオペラを書いていて、今期メトロポリタン・オペラで上演される予定なので、ちょっと紛らわしいです。

見に行くことに決めた理由は、単純に今まで見たことなかったからです。

2. あらすじ

オペラのあらすじは、何ともくだらない男女の惚れた腫れたのお話が定番です。このオペラも御多分に洩れずですが、以下かなり簡略化したあらすじです。

第1幕

舞台は19世紀末のフランス。金持ちの貴族ギヨーは、貴族のブレティニや友人達とディナーをしている。

同じ頃、近衛士官レスコーは従妹のマノンと再会する。レスコーはマノンに、自分が戻るまで動かないように言うが、マノンは通りすがりの騎士デ・グリューと恋に落ちてしまい(笑)、二人でパリへ向かう。

第2幕

マノンとデ・グリューはパリのアパートで暮らすが、レスコーが貴族のブレティニと一緒にマノンを取り戻そうと訪ねてくる。デ・グリューとレスコーが話している間、ブレティニはマノンに「デ・グリューは彼の父に連れ去られる。自分のもとに来れば、贅沢な暮らしをさせてあげるよ。」と誘惑する。

マノンは考えた末に、デ・グリューと別れることに決める(笑笑)。デ・グリューは父の手下に襲われ連れ去られる。

第3幕

マノンはブレティニと一緒になり、贅沢で豪華な暮らしをする。が、今デ・グリューが神学校で神父になろうとしていることを聞きつける。

マノンは神学校を訪ねてデ・グリューと再会する。マノンはよりを戻したいと言い、最初は拒絶していたデ・グリューもついに絆される。

第4幕

マノンとデ・グリューは金を稼ぐために賭博場に行く。デ・グリューは貴族ギヨーと賭けで勝負し、大勝ちするが、ギヨーからイカサマだと言われる。マノンとデ・グリューの二人は逮捕される。

第5幕

デ・グリューは父の計らいで釈放されるが、マノンは収監され流刑の身となった。デ・グリューは何とかマノンを救い出したが、彼女は衰弱している。デ・グリューに抱かれてマノンは息絶える。

3. 感想

あらすじを読むだけでは、享楽的なマノンという女(まだ16歳という設定なんですけどね!)が男を渡り歩くお話かよ...と思いますが、音楽は甘く美しい調べが続き、耳に残りやすいです。私にとっては聞いたことのない曲ばかりだったにも関わらず、上演の間特に飽きることもなく楽しみました。

予習によると「見せ場が多いオペラ」とのことでしたが、主役のマノン(ソプラノ)、デ・グリュー(テナー)共にかなり高音で聞かせる箇所が多く、歌い終えると大きな歓声が上がりました。

今回の公演に関しては、とにかくマノン役のLisette Oropesaとデ・グリュー役のMichael Fabianoが素晴らしかったです!特に、Michael Fabianoの感情をたっぷり込めたような声がよく響いていたと思いました。Michaelさんは、公演後に彼の新アルバムのサイン会をやったようです。(行かなかったですが。)

という訳で、長時間のオペラだったものの、良い音楽と良い歌い手を堪能しました。一般的な知名度はそれ程でもないと思いますが(自分が知らなかっただけ?)、「マノン」は個人的にオススメだと思います!