ミュージカル「CHESS(チェス)」鑑賞


ミュージカル「チェス」は、ティム・ライス(作詞)と、スウェーデンのポップグループABBA のベニー・アンダーソン&ビョルン・ウルヴァース(作曲)による共作です。舞台化に先駆けて、1984年に本作のコンセプトアルバムが発売され、「One Night in Bangkok」などが米英でヒットしました。

舞台の方は1986年にロンドン・ウェストエンドで初演され、3年間のロングランを記録しました。1988年にはニューヨーク・ブロードウェイで 脚本を改訂して上演されましたが、わずか数ヶ月で閉幕しました。以降2025年までブロードウェイでは正式に再演されませんでした。

なお、日本でも過去に本作の公演が行われたようです。


2025年10月、ブロードウェイで本作のリバイバル公演(プレビュー)が始まりました。この再演ではエミー賞作家ダニー・ストロングが脚本を刷新し、トニー賞演出家のマイケル・メイヤーが新たな視点で演出を手がけました。以降は当初の予定を延長して上演が続いており、主要な登場人物を演じる豪華キャストも話題になっています。


私はこのミュージカルについて知識が全くなく、「One Night in Bangkok」のサビを聞いて「昔どこかで聞いたことあるかも...」思う程度でしたが、公演が始まった頃から街中のビルボードやYoutubeのコマーシャル等で「チェス」の宣伝を頻繁に見かけるようになり、観てみようと思いました。

また、主演の一人アーロン・トヴェイトは映画「レ・ミゼラブル」にアンジョルラス役で出演したことで有名ですし、他にも様々なステージで彼が歌う動画をYoutubeで見たことがあったので、彼のパフォーマンスを生で観るのも楽しみのひとつでした。


1. 基本情報

作品名:CHESS
作詞:Tim Rice, Björn Ulvaeus
作曲:Benny Andersson, Björn Ulvaeus
脚本Danny Strong
監督:Michael Mayer

劇場:Imperial Theatre (249 West 45th Street, New York)
観劇日時:2026年2月4日 午後7:30〜10:10(休憩1回)

https://chessbroadway.com/


インペリアル劇場は約1500席を収容し、ブロードウェイの中では比較的大きな劇場です。90年代には「レ・ミゼラブル」のロングラン公演が行われたことでも有名です。以前私のブログで紹介したミュージカル「Water for Elephants」も、2024年にこの劇場で上演されました。

2. あらすじ

ブロードウェイ版とロンドン・ウェストエンド版で話が異なるとのこと。

前半

舞台は米ソ冷戦下の1979年。イタリアのメラーノでの世界チェス選手権で、現世界王者のアメリカ代表フレディ・トランパーと、ソ連代表の挑戦者アナトリー・セルギエフスキーが、世界チャンピオンの座をかけて対決する。この対決は単なるチェスの試合を超え、CIAとKGBの思惑が絡む代理戦争の様相を呈していた。

フレディは天才的だが傲慢で、挑発的な言動を繰り返す人物。彼のセコンドで恋人でもあるハンガリー出身のフローレンス・ヴァッシーは不安定な彼を支えようとするが、次第にその関係に限界を感じ始める。一方、穏やかで理知的なアナトリーもまた、ソ連という国家の巨大な重圧に苦しんでいた。

チェスの対決では、フレディが精神的に自滅して試合を放棄し、アナトリーは勝利を収める。また、フローレンスとアナトリーは互いに惹かれ合い、心を通わせていく。アナトリーは勝利の栄光ではなく自由を選択し、ソ連を捨てて西側への亡命を決意する。

後半

4年後。タイのバンコクでは、アナトリーが世界王者として新たなソ連代表とのタイトル防衛戦に臨んでいる。そこには、テレビ局の解説者となったフレディも現れる。

米ソの緊張が高まる中、ソ連KGBは卑劣な手段でアナトリーを追い詰める。ソ連に残してきた妻スヴェトラーナをバンコクへ呼び寄せ、アナトリーに帰国を迫らせる。さらに、フローレンスが長年探し続けていた父(ハンガリー動乱で消息不明)の生存をちらつかせ、政治取引の材料にする。

アナトリーは、自由への渇望、愛するフローレンス、そして祖国に残した家族や責任の間で激しく葛藤する。最終的に彼は、フローレンスを父と再会させることを条件に、自らの自由を諦めてソ連へ帰る決断をする。

そして、別れの悲しみに暮れるフローレンスの元に現れたのは...。


3. 感想など

音楽の魅力

さすがABBAのメンバーが手掛けたと思えるような、80年代当時のディスコやポップスの響きが心地よい名曲がたくさんありました。

後半最初にフレディが歌う「One Night in Bangkok 」は、試合が開催されるバンコクの繁華街の情景を描いていて、本作中で最も有名な曲です。音楽に合わせて踊る女性ダンサーたちのセクシーな衣装が目を惹きましたが、フレディが下着姿!で登場したのにも驚きました。ダンサー達が彼に服を着せていく演出でした。

フローレンスが力強く歌う曲「Nobody’s Side」もキャッチーで耳に残り、また「I Know Him So Well」(スヴェトラーナと一緒に歌う)や「Someone Else’s Story」など印象的なバラードもありました。どれも単体のポップス曲として成立しそうな名曲だと感じました。

また、前半最後でアナトリーが祖国(心の故郷)への愛を歌う「Anthem 」も、圧倒的な歌唱で心に響きました。


キャストの魅力

そういった名曲を歌う実力派キャスト達のパワーにも圧倒されました。

前評判のとおり、アナトリー役を演じるニコラス・クリストファーの歌唱は圧巻でしたが、彼だけでなくフレディ役のアーロン・トヴェイト、フローレンス役のリア・ミシェルもそれぞれ素晴らしい歌唱を披露していたと思います。

アーロン・トヴェイトは、精神的に不安定な役柄を演じながらも、持ち前のセクシーなルックスと歌声で存在感が際立っていました。

リア・ミシェルは、芯の強い声が印象的でしたが、見惚れるような美しさ!で、美しいメロディがさらに美しく聞こえました。

全体的に高音で熱唱系の曲が多かったので、全てを聴き終えて満足感がありました。(悪い言い方をすれば、ちょっとお腹いっぱいという感じ...)


ストーリーと演出

本作は初演から「ドラマ性が弱い」と言われてきたとのことですが、今回ダニー・ストロングによって脚本が大幅に改訂されました。例えば、ヒロインのフローレンスの背景が深掘りされ、彼女が単なる「恋人役」ではなく運命に抗う一人の女性として力強く描かれている他、CIAとKGBの裏工作といった政治スリラーの要素も強まり、より緊迫感のある構成になっています。

単なるチェスの勝負に国家間の争いが絡んでくるという設定には、大袈裟な感じも拭えませんでしたが、うまくエンターテインメントとして昇華されていたと思います。

なお、タイトルは「チェス」ですが、チェスのルールを知らなくても全く鑑賞に問題はありません!(笑)

演出面では、舞台背景に巨大なLEDパネルを導入し、静かなチェスの試合を対局者のクローズアップでスリリングに見せていたり、1980年代当時のニュース映像を差し込んで登場人物が国家のプロパガンダに呑み込まれる様子を視覚的に強調していました。

巨大パネルによる視覚効果は、以前に観たミュージカル「サンセット大通り」でも見られた演出で、昨今のトレンドのようです。


総評

実力派キャスト達が歌い上げる名曲の数々に、現代的な演出が融合した素晴らしいショーした。また、アンサンブル達のダンスも印象に残りました。

当初の予定を延長して2026年5月まで上演されることが決まったようです。熱いミュージカルを求めている方にお勧めしたい作品です。

 

4. チケットの取り方

さて、今回私はTelechargeというサイトで「チェス」のチケットを取りました。Telechargeはニューヨークの舞台公演のチケットを販売する専門サイトで、いくつかの公演のLottery(抽選)やRush (当日公演)チケットも割引で販売しています。

「チェス」もLotteryの対象になっていたので、私はしばらく応募してみたのですが、何日続けてみても一向に当たらず...結局Lotteryは諦めて普通に購入しました。



私の席はオーケストラ席の前から3列目、一番右端でした。端っこからどういう風に舞台が見えるのか少し心配でしたが、私の前列の人の頭が舞台を遮ることもなく、とても観やすかったです。

さらに、主要キャストがステージ端のかなり近くまで来て歌うシーンもあり、キャスト達の汗や唾(笑)までしっかりと見え、すごい臨場感でした。

本公演にかなり満足できたのは、良い席だったおかげもあると思います。


Telecharge、TodayTix等のチケット販売サイト/アプリでは様々な割引を提供しており、期間限定の割引セールもあるので、お手頃な値段で舞台公演を見たい方はぜひ活用することをお勧めします。

オンラインでの割引以外にも、伝統的な方法として、公演当日の朝10時頃に各劇場のボックスオフィスに並んでRush チケットを入手する方法もあります。いずれにしても、あくまでチケットが残っていればという条件付きになり、人気が高い公演の割引チケットの入手はかなり困難になります。


前から3列目右端からの眺め