9月11日の朝。テレビをつけると、One World Trade Centerでの同時多発テロ事件犠牲者の追悼セレモニーが中継されていました。犠牲者のお名前を一人一人読み上げる毎年恒例のセレモニー、あれからまた1年経ったのかと思わされます。あの事件からは早いものでもう18年の年月が過ぎました。 私自身は、ニューヨークに住み始めてから12年になります。事件のときはまだ日本でしたが、まさかここに住むことになるとは当時は想像もしていませんでした。 日本生まれの日本育ちでありながら、誰に頼まれた訳でもなく、縁もゆかりもないこの場所に移り住み、これだけ長く居続けているなんて...、やっぱり何か縁があったのかもしれませんが、本当にここが好きなんだなぁと思ってしまいます。 最初にニューヨークを訪れたのは1999年、夏季休暇で友人とアメリカを旅行したときでした。お決まりの観光スポットを周り、ブロードウェイのミュージカルに感激もしましたが、それより何より忘れられないのが、ただキョロキョロしながらあてもなく街を歩いたときに感じた高揚感です。 金融の最前線で働くウォール街のビジネスマン、颯爽と歩くモデルのような女性、路上のパフォーマー、ターバン巻いたタクシードライバー、大声張り上げて物を売るチャイナタウンのおばちゃん...。それまで見たこともなかった雑多な集まりだけど、みんなそれぞれ自信を持って人生に果敢に立ち向かい、精一杯生きている、ように見えました。 その頃私は若く(笑)、色々ウブな悩みもあって、何事にも自信が持てませんでした。でも、ここで行き交う人達の誰も私のことなんか気にかけてない、それがまるで自分の存在を許容してくれているかのように感じさせてくれました。どんなことを考え、どんな格好をし、どんな趣向を持ち、どんな仕事をしていても、それはあなた自身で誰も文句なんか言わないよ、とでも教えてくれるかのように。 間もなくして、2001年9月11日に同時多発テロ事件がありました。飛行機に激突されたワールドトレードセンターが崩壊していくあの映像は、今もたくさんの人の記憶に焼き付いていると思います。 旅行のせいでニューヨークが好きになった私も大きなショックを受け、無力感でいっぱいになりながら、色々な思いを整理できないまま、家族や友達と話したりしました。今思い返せば、あの事件が僕のニューヨークへの想いを一層強くさせたのかもしれません。 その後、色々(?)あってアメリカの大学院(ニューヨークではない)に留学することになったのですが、学校が休みのときはニューヨークへ度々遊びに行きました。そして、結局ニューヨークで仕事を見つけ、卒業後にここに引っ越してきたのです。 振り返ってみれば、最初ニューヨークに来たときに感じた高揚をずっと引きずっていて、年月を経て何とか住むところまで漕ぎ着けた!という感じです。自分の人生で、こんな強い意思を持って何かを選択したことはなかったように思います。 実際に住んでみると、憧れていたような生活とはいきませんでした。最初に住んだアパートのビルは古いし、なんか汚いし、引っ越して来た当日に部屋が準備できてないし、家具の配達やケーブルTVの工事は時間どおりに来ないし...。生活の立ち上げ時に感じたストレスや不安は数え切れないです。 それでも、夜に外へ出てプラプラ歩きながらライトアップされたエンパイアステートビルを見上げると(ワールドトレードセンタービルはなくなったので)、「あぁ、ここに住んでるんだな〜。」という実感が湧き、勇気づけられました。何年も経った今でも、何かでへこたれたときにエンパイアステートビルを見上げて、同じような気持ちになります。 当たり前ですが、ニューヨークに来た誰もが同じように感じる訳ではありません。ニューヨークを訪ねてきた友達の中には、何の感動や感慨も持たずに帰っていった人もいます(涙)。ニューヨークに長年住んでいながら、別に住みたくて住んでいる訳じゃない(仕事があるから)と言う人もいます。この辺は各人の好みもあるし、訪れるタイミングなんかも影響するでしょうね。 ニューヨークの魅力と言えば...、ミュージカル・コンサート・オペラ等のエンターテイメントの他にも、世界中の食事を楽しめるレストランやカフェ、美術館、ナイトスポット、スポーツ観戦など、挙げれば切りがありません。が、最初に書いたように、ただ街を歩く中で感じる楽しさ、刺激、ワクワク感というのは、私以外にもたくさんの人が感じるんじゃないかと思います。 何であれ、せっかくニューヨークに来る機会があった人には「また来たい!」と思ってもらいたいものです。 このブログでは、ニューヨーク生活の中で体験したことや感じたことをあれこれと綴りながら(半分自分の備忘録として...)、この街の魅力を少しでも伝えられたらと思います。ニューヨークに旅行予定の方やニューヨークで生活したいと考えている方にも、有益な情報を提供できればと考えています。 悲しい事件が二度と起きないことを祈りながら […]